プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ルアンパバーンにおける持続可能な都市開発・交通管理プロジェクト
(英)Project on Sustainable Urban and Transport Management in Luang Prabang

対象国名

ラオス国

署名日(実施合意)

2022年10月24日

協力期間

2023年2月20日から2026年2月27日

相手国機関名

公共事業運輸省運輸局、ルアンパバーン県公共事業運輸局

背景

ラオス北部に位置する古都ルアンパバーンは、伝統的な建築とヨーロッパ調のコロニアル建築が融合した世界文化遺産都市である。近年の成長は著しく、人口は2015年の約9万人から2025年には約11.4万人まで増加すると推計されている(JICA、2016年)。また、周辺地域を含めたルアンパバーン県内の登録車両台数は年率平均8.9%で増加してきており(2010年~2021年)、2021年には13.9万台を記録し(ルアンパバーン県公共事業運輸局、2022)、全国で4番目に車両が多い都市となっている。1995年にルアンパバーンがUNESCO世界文化遺産に登録されて以降、観光客は急激に増加し、2019年には過去最多の約86万人が来訪するなど、ラオス有数の観光地として国内外で広く知られている。新型コロナウイルスの影響により、2020年は年間の観光客数が約27.5万人に減少したが(ルアンパバーン県情報文化観光局、2020年)、中長期的には順次回復していくことが期待される。
古都を取り巻く周辺環境は大きく変化している。ルアンパバーンは中国の一帯一路構想におけるメコン地域の南北回廊の通過地点として位置づけられ、2021年12月にラオス・中国高速鉄道(ボーテン~ビエンチャン間の鉄道)が開通し、世界遺産地区から東に約10kmのところに鉄道新駅が完成した。同鉄道の開業により年間約13万人の来訪者の増加が見込まれている(世界銀行、2021年)。さらに将来的には、ビエンチャン~バンビエン高速道路がルアンパバーンを経由して中国に接続する計画があり、鉄道だけでなく高速道路もルアンパバーンに到達することになる。加えて、ルアンパバーン世界遺産地区の周辺において経済特区(SEZ)開発も計画されている。これらの大規模事業が進むことによって、今後人流、交通流が大幅に増加することが予想されている。
ルアンパバーン県は第9次社会経済開発計画(2021年~2025年)でルアンパバーンを持続可能な観光拠点として確立することを掲げているが、現状では人・車の過剰流入による負の影響が十分に考慮できていない状況にある。適切な対策なしに人流・交通流が増え続ければ、ルアンパバーンの世界遺産の街の魅力、人々の日常的な生活が失われてしまう恐れがあるが、現時点では持続可能な都市開発や都市交通に向けた長期的なビジョンや計画が不在である。
また、ルアンパバーン市内では既に、短中期的に解決すべき課題が顕在化している。具体的には、世界遺産地区内で横行する路上駐車とそれによる景観の棄損、歩道の幅員不足や不連続性による歩きにくさ、公共交通の不在、移動ピーク時間帯の交通渋滞、高い交通事故のリスク、道路密度不足などがあげられる。
同状況下、ルアンパバーンの開発と保全に携わる県の行政機関職員が同都市の課題解決に資する計画策定能力や事業実施能力を向上させることが課題となっている。かかる背景を踏まえて、ラオス政府はルアンパバーンにおける持続可能な都市開発・交通管理に関する技術協力プロジェクト(以下、「本プロジェクト」という。)を我が国に要請した。これに対し、JICAは、2022年10月にラオス政府との間で技術協力事業合意文書(Record of Discussion、以下「R/D」という。)の署名を行い、協力の枠組みを確認した。

目標

上位目標

ルアンパバーンが持続可能な観光都市として発展するために策定した都市交通マスタープラン(注)に基づいて優先的な事業が実施される。
(注)先方政府の要望に従い“マスタープラン“という用語を使用しているが、日本の地方自治体等が策定するマスタープランと比べて調査のプロセスや手法、内容が必ずしも同様ではないことに留意が必要。本プロジェクトでは、過去の都市交通調査の結果や追加的に実施する補足調査をもとに簡易な交通需要予測を行いつつ、先方実施機関と将来ビジョンや優先施策について短期間で取りまとめ、計画策定能力の向上を図るものである。

プロジェクト目標

観光都市ルアンパバーンの都市交通に関わる行政機関の計画策定能力及び事業実施能力が向上する。

成果

1.ルアンパバーン交通協議会2を通じて2045年の都市構造を見据えた都市交通マスタープランが策定される。
2.世界遺産地区内の安全・安心で快適な人中心の空間づくりを推進するための交通パイロット事業3が計画・実施される。
3.世界遺産地区と周辺地域を結ぶ、住民と観光客の両方にとって利便性の高い交通体系を構築するためのパイロット事業が計画・実施される。

活動

成果1にかかる活動

1-1.都市交通に関わる関係行政機関の役割を明確にする。
1-2.ルアンパバーン交通協議会を設置する。
1-3.都市交通及び都市開発に係る関連計画のレビューを行う。
1-4.対象地域の都市交通及び都市開発に係る現状の調査及び分析を行い、課題を抽出する。
1-5.日本の都市交通や都市開発の取り組みを学ぶための本邦研修を実施する。
1-6.都市構造及び都市交通に係る将来ビジョンの案を作成する。
1-7.都市構造及び都市交通に係る将来ビジョンについて交通協議会で合意形成を行う。
1-8.都市交通マスタープラン案を作成する。
1-9.成果2及び3のパイロット事業の結果を都市交通マスタープラン案にフィードバックする。
1-10.交通協議会で都市交通マスタープラン案を最終化する。

成果2にかかる活動

2-1.活動1-4の結果を踏まえて遺産地区内の移動実態やパイロット事業の候補地選定などのための補足調査を実施する。
2-2.財務的な分析を含むパイロット事業案を計画する。
2-3.交通協議会でパイロット事業案を最終化する。
2-4.パイロット事業に関するステークホルダー会議を開催して合意を得る。
2-5.パイロット事業を実施する。
2-6.パイロット事業のモニタリング及び課題・教訓の抽出を行う。
2-7.都市交通計画に課題・教訓をフィードバックする。

成果3にかかる活動

3-1.活動1-4の結果を踏まえて必要となる補足調査を実施する。
3-2.財務的な分析を含むパイロット事業案を計画する。
3-3.交通協議会でパイロット事業案を最終化する。
3-4.パイロット事業に関するステークホルダー会議を開催して合意を得る。
3-5.パイロット事業を実施する。
3-6.パイロット事業のモニタリングおよび課題・教訓の抽出を行う。
3-7.都市交通計画に課題・教訓をフィードバックする。

投入

日本側投入

1)専門家派遣(コンサルタント合計約50M/M)

a.総括/都市交通計画
b.道路計画/交通管理計画
c.公共交通計画/交通調査/需要予測
d.歴史・景観まちづくり
e.都市計画/都市計画規制システム
f.経済分析/事業化モデル
g.スマートシティ/DX推進
h.デザイン/ブランディング/広報
i.環境社会配慮

2)長期専門家

a.パイロット事業実施・モニタリング/能力開発/研修管理

3)研修員受け入れ

a.本邦研修
b.ラオス国内の現地研修

4)機材供与:なし

相手国側投入

1)カウンターパートの配置

a.プロジェクトディレクター:公共事業運輸省運輸局長
b.プロジェクトマネジャー:ルアンパバーン県公共事業運輸局長
c.公共事業運輸省運輸局職員
d.ルアンパバーン県庁職員(公共事業運輸局、世界遺産事務所、情報文化観光局、公共安全治安局(県交通警察))
e.ルアンパバーン市役所職員

2)案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供

a.オフィススペース(家具類、電気、水道、安全管理含む)
b.ラオスでのプロジェクト活動に必要なデータや安全対策