2018年10月16日
プロジェクトでは、モンゴル北部にあるフブスグル県の2つの通常学校と一緒に活動をしています。2017年から2018年にかけて、障害のある子どもや学習に遅れのある子どもに対して個別教育計画を作成し、研究授業を通して教員の指導力向上を目指す研修会を実施しました。未来21世紀統合校で研究授業を実施した、同校小学部教員のゾルジャルガル先生に、2018年8月にお話を伺いました。
名前はゾルジャルガルです。教員10年目で、フブスグル県のウランウール村にある学校で6年働いた後、未来21世紀統合校に異動しました。現在この学校に勤務して4年目です。
エルデネゾルさんは2018年9月から5年生になりました。2年生のときからずっと担任をしています。2年生のころは、授業中でも勝手に席を立って教室を出て行ったり、教員の話を聞いていなかったり、とても落ち着きのない子どもでした。学習面では、読むことは問題なかったのですが、計算間違いや書き間違いが多く、文字を雑に書いていました。この学校には、障害のある子どもが障害特性や教育ニーズに応じた指導を受けることのできる「子ども発達センター」があります。センターに行くと自分の好きなことを学べるので、センターで過ごすことも多かったです。彼女が休むと授業が進むので、今日も休んでくれたらいいのに、と思う日もありました。
センターの担当教員であるエンフジャルガル先生が、エルデネゾルさんは教え方や教員のかかわり方を変えると伸びる子どもだから、研究授業をやってみたらと勧めてくれました。しかし、最初はとてもストレスに感じ、やりたくないと思っていました。エンフジャルガル先生が一緒にやりましょうと言ってくれたので、気持ちが楽になりました。
慣れていなかったので、とても難しかったです。エンフジャルガル先生に聞きながら作りました。指導案を作ったところで、ちょうど首都ウランバートルにある特別学校の先生が来て、講義や助言をしてくれました。そのとき、私はこれまでエルデネゾルさんの今持っている力よりも難しい課題を出していたことに気づきました。指導案に書いていた課題も、難しいものであることに気づきました。特別学校の先生にも個別に相談し、指導案の見直しと教材の工夫を行いました。
指導案があったので、授業の流れをイメージして進めることができました。エルデネゾルさんについては、最後のほうは集中力が切れてしまったので、まだ課題が難しかったかもしれないと後で反省しました。それ以来、彼女のレベルや興味関心に合った課題を出すように工夫しています。たとえば、彼女は文字を書き写すことが好きなのですが、今までは長い文章を書き写すように指示していたため、途中で飽きて教室を出て行くことがありました。短い文章をきれいに書き写すようにしたところ、集中して取り組めるようになり、彼女自身が達成感を得られるようになりました。その結果、突然立って教室を出て行くことがなくなりました。今は、センターに週に2時間通うように時間を設定し、それ以外の時間は教室で過ごせるようになりました。
以前は教室を飛び出して廊下を歩いたりしていたので、特に同じ階の教室の教員たちからは、エルデネゾルさんが変わったねと言われます。
子どもが変わったことで、何が重要かに気づきました。私のクラスにはエルデネゾルさん以外にも学習に課題のある子どもが何人かいます。その子どもたちにも、各自のレベルにあった課題を出すことができるようになりました。個別教育計画の書き方について、若手教員から助言を求められることもあります。自分の経験に基づいて、具体的にアドバイスするようにしています。それも大きな自信につながっています。これからも、校内で指導力が向上するように、できる限りの指導をしていきたいと思います。