プロジェクト専門家の気づき

2019年7月25日

総括 石井徹弥

この前のプロジェクトニュースでは、プロジェクトで試行、提案している発達支援のモデルを紹介させていただきました。プロジェクトは2019年7月をもって終了いたしました。終了にあたり、4年間にわたってモンゴルでの活動に従事したプロジェクト専門家2名の気づきを紹介させていただきます。

モンゴルではパイロット活動を通じて試行したことが制度となることを本プロジェクトの4年間を経て、改めて実感しました。例えば、改善された個別教育計画が教育大臣令で認められ、プロジェクト実施中に全国で活用されることが決まりました。プロジェクト終盤に成立した「障害のある子どもを学校で受け入れるための規則」により、就学支援会議、校内委員会が制度化されました。技術協力プロジェクトはモデルを構築するもので、無償資金協力のようにモンゴル側に目に見える建物や機材を供与するものではないのですが、制度として残せるものを作り出せたことを嬉しく思います。

副総括 鈴木サヤカ

JICA「モンゴル特別支援教育にかかる情報収集・確認調査」の団員として、2013年11月、ウランバートルのゲル地区にある1軒の家を訪問したことが全ての始まりでした。小さな建物の中でストーブを焚き、外の寒さが入らないように窓を締め切って、母と娘がひっそり暮らしていました。重い障害のある15歳の娘は一日中、ベッドの上に座って過ごします。「大きくなってしまったので、抱いて出かけることもできない」と母親は目に涙を浮かべていました。「全ての親にとって子の成長は嬉しいものだ」と思っていた私は、大きな衝撃を受けました。この子が家の外の世界-学校に行けるようにしたい、母親が彼女の成長を喜べるようにしたい、その思いで本プロジェクトに取り組んできました。

プロジェクトの4年間を通じ、モンゴルにおける発達支援体制モデルが示され、インクルーシブ教育の方針が打ち出されました。障害のある子どもたちが必要な支援を受けながら地域社会で暮らし、地域の学校で学ぶ可能性が大きく開かれたことを嬉しく思います。けれど、まだまだ家から出ることのできない子どもたちがいます。行政機関、NGO、ドナー、そして市民が力を合わせ、インクルーシブな社会実現に向け、取り組んでいく必要があります。