AQALフェーズ2の出発

2021年11月8日

2015年9月から2020年3月まで実施された、オルタナティブ教育推進プロジェクト-Advancing Quality Alternative Learning(AQAL)が一年の時を経てフェーズ2としてパキスタンに戻ってきました。

このプロジェクトニュースでは、広範囲に渡るプロジェクト活動の裏側も含めて皆さんに現地の様子を紹介していくことを目的としています。

2021年2月に正式にフェーズ2が始まり、当初、コロナ禍の影響もあり日本人専門家は日本から遠隔でプロジェクトを運営していました。

8月から日本人専門家が順次パキスタン・ラホール入りし、10月に全員が揃ったところです。

日本から専門家3名と現地のパキスタン人専門家15名、さらにグラフィックデザイナーや研修官など活動をサポートするスタッフを含めた計30名でプロジェクト運営を進めています。

このプロジェクトは、5か所を拠点に展開されます。まず、首都のあるイスラマバード、海に面する商業都市である旧首都カラチ、アフガニスタンと国境を接する北部KP州、イランとアフガニスタンと隣り合わせのバロチスタン州、そしてムガール帝国の古都ラホールを州都にするパンジャブ州にそれぞれプロジェクト事務所を構え、連邦制度のパキスタンで、連邦と各州に寄り添った活動を広範囲かつ同時進行で行っているダイナミックさがあります。日本人専門家はラホールを拠点に全国展開をしていく予定です。

今日は、活動の一コマ、「カリキュラム・教材編」を紹介します。

プロジェクトでは2011年に開始した「パンジャブ州ノンフォーマル教育推進プロジェクト(NFEPP)」にて、貧困層や女性、マイノリティなど、脆弱な立場に置かれた学習者の学力やコンピテンシーを限られた資源の中で効率的に向上させることにフォーカスしました。そこで、学校に行っていなくともそれまでに身につけた生活スキルや知識を最大限活用し、実用的でインタラクティブな手法で学ぶことで、公教育に比べて短期間で有効に学べる速習型学習プログラム(ALP)を開発しています。AQALフェーズ1では、これを基にノンフォーマル教育(NFE)のカリキュラム、教材の開発・改訂を連邦政府と3つの州とともに進めてきました。
2015年にパンジャブ州政府によってカリキュラムが承認されて以降、2016年にはバロチスタン州、シンド州、2017年には連邦政府によって次々と承認されていった背景があります。

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改訂版カリキュラム(連邦)

これらカリキュラムは、学校に行ったことがない、あるいは中退した子どもや若者がNFEのチャンネルを通して短期間に学んでも、その教育の質において公教育との同等性を担保するため、公教育カリキュラムに内容が準拠していることが重要になります。

2015年に利用が始まったカリキュラムも、連邦政府の新規カリキュラムに連動させる形で改訂が進んでいます。また、フェーズ2からは、初等教育に加え、前期中等教育のALPも作成しますし、就業と連携する識字の取り組みも始めます。

母体の設計図にあたるカリキュラムの改訂に合わせ、今度は教科書の改訂も必要になります。
先日、ALP初等教育の改訂教科書作りワークショップに参加してきました。パキスタン国内の教育・学校カリキュラムの有識者が集まり、プロジェクトスタッフとともに議論を重ねながら英語、算数、国語、理科、社会の科目を教師用のガイドブックと生徒用教科書それぞれブラッシュアップしています。

改訂議論と並行して、現場入りしているプロジェクトスタッフのデザイナーが出版用データに随時反映します。このようなプロセスを経て、政府の承認を待つことになります。

年明けには連邦政府の承認を見込んでおり、順次政府管轄内にあるノンフォーマル教育を実施中の現場で利用されることが見込まれています。

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ALP教材各種

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学校教育のカリキュラムとの比較

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有識者と出版デザイナーによる協働作業

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教科毎に有識者が改訂ポイントを精査