水産資源を再生させ、地域復興に取り組む パート2−大衆魚ミルクフィッシュ養殖と女性たちが取り組む加工販売−

2016年2月2日

前回お伝えしたTanauan町のカキとミルクフィッシュの混合養殖支援の続きをお伝えします。

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ミルクフィッシュとカキの混合養殖を再開したTanauan町のSanta Cruz村の人々。ミルクフィッシュのペン養殖(竹と漁網を使った浅瀬での養殖)では、30以上のペンが稼働しています。
日本人専門家や現地行政関係者は、稚魚の確保、餌のやり方などの技術的な指導ばかりでなく、餌や稚魚購入を支援する投資家募集、養殖組合の規約整備、資金管理や組織的な販売など、組合の育成にも汗をかいてきました。

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ミルクフィッシュ稚魚を生簀に移す

投資家は徐々に増え、これまでに40回近くミルクフィッシュが収獲されています。中には、複数回収獲した漁民もいます。台風ヨランダ被災者はゼロから活動を再開し、今では台風ヨランダ前よりも収入が増えている漁民も出てきました。地域の人々の間に活気が出てきました。

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ミルクフィッシュの収穫

その後、現地の民間飼料会社が2つのペンに飼料を無償提供し、国際NGOの支援も加わり、ペン稼働数が伸びています。水産資源局事務所はミルクフィッシュ投資家募集会を開催するなど、引き続き養殖の基盤強化に奔走しています。
また、台風ヨランダ前には組合に所属していない漁民がいましたが、行政とプロジェクトによる働きかけの結果、現在では養殖に取り組む漁民全員が組合員になりました。これにより、組織的な組合運営ができるようになりました。例えば、魚が売れるサイズになっても、組合の販売スケジュールに合わせ、販売価格が下がらないように収穫を調整するといった行動が見られるようになりました。個人よりも集団の利益を考える姿勢が組合の中で定着しつつあります。この姿勢が養殖の環境にも良い影響を与えることが期待されます。

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収穫したミルクフィッシュの箱詰め

今後は、漁民の収益性を高めるために、漁民が資金を独自に運用し、漁民自身が新たな養殖に必要な飼料代や稚魚確保に投資できるようにすることなどが課題としてあげられます。

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収穫したミルクフィッシュ

また、Santa Cruse村では地元の女性が中心になって、ミルクフィッシュを加工するグループが結成されました。日本人専門家が導入しLeyte州農業部との協力で開発して特許を得た新製法(フィリピン国特許番号:2-2015-000251)を使って、圧力鍋でミルクフィッシュを丸ごと加工します。加工後は頭からしっぽまですべて食べられるほど骨が柔らかくなっています。

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ミルクフィッシュの加工に取り組む女性たち

現地ではソフトボーン・バンゴス(ミルクフィッシュ)と呼ばれています。パッケージや保存期間を延ばすことに工夫を繰り返し、現在は真空パックにして販売しています。販路も確実に増えてきました。今では、複数の地元スーパー、地元レストラン、空港前の食堂などに定期的に商品を卸し、安定した収入を得ています。地元女性たちの新しい収入源が生まれました。
加工施設にいる女性たちは「ぜひ私たちの商品を買っていって。おいしいですよ!」と笑顔で声をかけてくれます。加工施設の中に、元気な女性たちの笑いがこだまします。女性たちの笑顔と明るさがきっとこの地域の復興を支えてくれるにちがいない、と感じた瞬間でした。

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加工品が並ぶ地元スーパーマーケット

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加工品を手にする女性グループのメンバーたち