安全なまちづくり パート1−高潮・洪水などのハザードマップ作成−

2016年5月2日

本プロジェクトの主要な活動の一つに、復旧復興計画づくりの基礎となる「安全なまちづくり」があります。台風ヨランダ災害後、フィリピン政府は各自治体に対し、包括的土地利用計画を改訂するように指示を出しました。特に、包括的土地利用計画などの計画策定プロセスにおいて、気候変動の観点を基にしたハザードアセスメントを考慮することが求められています。
また、次の災害に備えた避難計画の見直しも急務でした。被災者からは「台風ヨランダが近づいてきた際、『storm surge(高潮)が来る!避難しましょう!』と気象庁や自治体から指示を受けたが、storm surgeがなんであるか理解できなかった。tsunamiが来る、と言われればみな逃げたのに、、。」という多くの証言がありました。この教訓から自治体、住民の多くが事前の備え、避難の大切さを認識しています。
これらの状況を鑑み、本プロジェクトでは、災害のリスクを住民に周知するため、また、政府関係者に土地利用計画や避難計画の作成・見直し、構造物対策などに活用してもらうため、プロジェクト開始直後からハザードマップ作成に取り組みました。

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ハザードマップのベースになるのが、正確な標高情報の入った地形図です。協力先の国々ではこの地形図が整備されていないケースが多いですが、フィリピンのプロジェクト対象地域も例外ではありませんでした。地形図は、想定災害に対するハザードマップ作成に欠かせない、ベースマップと呼ばれます。飛行機を飛ばしてレーザー測量し地形図作成を行いましたが、天候の影響で飛行機が予定通りに飛ばないなど、様々な苦労がありました。完成したベースマップは、地元自治体や他の支援機関などにも重宝され様々な用途で活用されています。

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自治体職員へのハザードマップの説明

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高潮ハザードマップ例

ベースマップ上には、台風ヨランダ規模の最大災害を想定したシミュレーションにより、被害の最も大きな原因となった高潮や洪水による浸水域や浸水深などのハザード分析結果を反映させます。台風経路の把握、速度、気圧の変化、海図・風の情報などのデータ収集や、被害を受けた建物などを訪問しての高潮痕跡調査を行います。これらのデータの数値解析結果をもとに、ハザードマップに掲載する情報の選択と想定台風に対するシミュレーションを行い、ハザードマップを完成させました。
出来上がったハザードマップには、日本の被災経験と復興の取り組みから得た知見と蓄積されてきた技術が結集されています。次回は、自治体職員や住民へのハザードマップの理解促進と、土地利用計画や避難計画への活用についてお伝えします。

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自治体職員によるハザードマップの活用

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ハザードマップを活用した自治体による復興計画 策定ワークショップ風景