安全なまちづくり:「ドローレスさん物語」第2回−運命の出会い−

2016年7月8日

2015年後半に差しかかったころ、タクロバン市長が、2013年11月の台風ヨランダ被災後、見直しを必要とされていた土地利用計画を改訂することを決断した。同市役所は、土地利用計画を改訂するにあたり、関係者との調整役としてジャニスさんをコーディネーターとして雇用し、市長室所属とした。実はその前にドローレスさんにも声がかかったが、コーディネーターは自分の所属する都市計画部から独立した立場の人員の方が、市役所内のしがらみとは一線を画し、裁量を発揮できるため適切と考え、この申し出を断っていた。
ここから土地利用計画の改訂を、低予算で実現するための作戦が展開される。ジャニスさんについては追って触れるが、土地利用計画改訂を実現させる担当者ができたことにより、台風ヨランダ後、再び改訂作業が動き出す。

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タクロバン市

タクロバン市は当初、現地のコンサルタントに土地利用計画改訂を委託することを検討したが、予算で折り合いがつかず、この計画は振り出しに戻る。このときドローレスさんは、改訂した計画を見届けずに定年することを覚悟した。

しかし、ここで本プロジェクトとの運命の出会いが訪れる。

ジャニスさんから本プロジェクトチームに、「土地利用計画改訂の支援をしてもらえないか?」と打診が入った。タクロバン市役所としては、個々の事業が別々に進んでしまう前に、市全体の開発の方向性を持ちたい。そのために今後10年の開発の羅針盤となる土地利用計画を作りたい。しかし、コンサルタントなしでどのように進めたらよいのかわからない。ジャニスさんは、「計画の内容についてだけでなく、計画の立て方への技術支援もしてもらえないか。」と熱い思いを語った。この要請を受けて、本プロジェクトでは、タクロバン市の土地利用計画改訂の支援をすることになった。
長い前置きとなったが、ここからドローレスさんの2015年の運命が新たな展開を見せることになる。

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ジャニスさん(左から3人目)ら、タクロバン市職員とプロジェクトチームの協議

この日から、文字どおり朝から晩まで、タクロバン市役所では、土地利用計画改訂の作業が行われた。限られた時間と予算の中で効率よく作業を行うため、同計画改訂プログラムの議論が、市役所職員、関係機関の専門家、本プロジェクトチーム、他国ドナーなどと毎日のように行われた。ここでドローレスさんが、タクロバン市の都市計画部と歩んできた40年間温めてきたアイデアや、経験に基づいた判断、そして持ち続けてきた熱い思いが、このプログラムに発揮されることになる。

つづく

次回は、「奇跡が起きた!」