安全なまちづくり:「ジャニスさん奮闘記」第2話−転んでもタダでは起きない二人三脚−

2016年11月14日

包括的土地利用計画(以下、CLUP)を自力で改訂することになったタクロバン市。CLUP改訂プロセスで重視されたのは、気候と災害軽減アセスメント(Climate and Disaster Reduction Assessment:CDRA)を行うこと、また、一連の計画作業に、市民参加の機会を持つことだった。

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JICAプロジェクトチームは、改訂計画のため、市がぶれない方針を持つようにアドバイスした。作業の進め方では、ワークショップの回数について議論があったが、コンサルタントを雇用していない市にとって、「みんなで話し合った結果、こうなりました。」と言える状況を作るのは、市職員、とりわけジャニスさんにとって重要であった。こうした状況も踏まえ、「みんなで考えて、みんなで決めるワークショップ」を複数回行うことを含む、改訂作業計画が出来上がった。
ジャニスさんはこの計画を持って、技術と費用の協力を求めてドナーを回った。JICAプロジェクトチームもドナーも思いは同じ。「タクロバン市の復興のために協力する!」
それ故か、技術や費用の支援は比較的あっさりと、複数の機関から承諾を得ることができた。ここまでは順調に進んだ。しかし、台風によってワークショップの予定が変更されると、計画が少しずつずれていく。
最初に行ったワークショップでは、目標や方針の議論に至らず、参加者が市の職員にもかかわらず、他人事な議論に終わった。この状態でバランガイ(村、地区を表す独自のフィリピン語)ワークショップに突入するのは危険である、とJICAプロジェクトチームから指摘が入る。市が方針をしっかり決めておかないと強い意見に流されたり、議論が発散して収集できなくなる危険性があるからだ。「この計画の主体は誰?」マニュアルは答えをくれない。答えを出すのはあなたたち。「みんなで決める。みんなって誰?」と迫るプロジェクトチーム。どうするジャニス?

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ワークショップで説明するジャニスさん(写真右)

考えた末ジャニスさんは、「市役所の方針」は一旦置いておいて、まずはバランガイワークショップを実施することにした。どんな交渉をしたのかはわからないが、2回実施するバランガイワークショップの2回目の講師を、市の都市計画部職員が行う事で折り合いをつけたらしい。講師をするとなると、都市計画部が本気になる必要がある。ジャニスさんは彼らにプレッシャーをかけたのだった。都市計画部職員の主体性を引き出すことに取り組んだ。
第1回目のバランガイワークショップは、USAIDの素晴らしいファシリテーションと、身近な問題として地域を考えた優秀なバランガイ役員たちによって、タクロバンの現実的な未来像が描かれた。10年がターゲットのCLUPに対し、理想論のぼやっとしたイメージしか描けなかった都市計画部職員の目が覚めた。2回目のワークショップでは、休日も返上して準備を行い、USAIDに負けず劣らずの見事なファシリテーションを行った。このワークショップを機に、タクロバンのCLUPは二人三脚から全員全脚、皆が肩を組んで走り始めることとなった。ジャニスさんの作戦は大成功だ。

つづく