安全なまちづくり:「ジャニスさん奮闘記」第3話−ジャニスさんの不安と国際協力機関の専門家たち−

2016年11月21日

住民とのワークショップを重ね、「みんなで考えて、みんなで決める」包括的土地利用計画(以下、CLUP)が現実味を帯びてきた。ワークショップでは、市役所職員が真剣に内容を検討するようになった。まさにみんなで考えるCLUPだ。

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ワークショップ会場の様子

しかし、ジャニスさんにはまだ不安があった。みんなで考えて、みんなで決めたら、適切なCLUPになるのだろうか?みんなで出した結論が技術的に正しい保証はあるだろうか?みんなの方向性がバラバラだったら?最終形のイメージが持てないジャニスさんは、大きな不安とプレッシャーを抱えていた。
このとき彼女の不安を取り除いたのは、2つの国際協力機関の技術インプットだった。
もちろん、その一つはJICAプロジェクトチーム。プロジェクトチームの専門家は、ジャニスさんに、次のワークショップに向け、計画のポイントを説明した。JICAプロジェクトチームにとっても、CLUPへのインプットとして一番重要な時期である。分析結果と優先順位、自ずと決まるものと、状況による判断が必要なもの等が説明された。現状分析と計画の視点がつながっていく。ジャニスさんの表情が変わる。確かに前にもプロジェクトチームの間で話していたが、「やっといろいろな事がしっくり来た。」ワークショップでの断片的な情報が、つながったような感覚だった。「みんな」にこのインプットが「今」必要だ。

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ワークショップで説明するジャニスさん

さらにもう一つ、国際連合人間居住計画(以下、UNHABITAT)によるインプットも、彼女の不安を取り除いた。この時期UNHABITATは、CLUP策定のため、タクロバン市職員対象のワークショップを独自に実施した。彼らは独自の手法を用いて分析を行い、その結果を元にCLUP案を策定したのだ。この時点では、市役所が実施中のワークショップとは全くリンクしていなかったのだが、奇しくも2014年にJICAプロジェクトチームが支援して策定した案とほぼ同じ結論となったのだ。ジャニスさんは驚きを隠せない。「JICAは2年前から知っていたのね。」
適切な情報を正しく理解して、みんなで考えれば、ある程度正しい方向性の結論に達するが、情報を正しく理解するために、専門家の意見が必要である。専門家たちは、「みんな」で考えるよりも、はるかに効率よく最適な結論を導き出すことが出来る。当たり前ではあるが、ジャニスさんは雷に打たれたような感覚をもってこのときそれを認識した。

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タクロバン市内郊外の様子

2つの異なる組織の専門家集団から同じ着地点のイメージを得たジャニスさん。なぜそうなるのかも、今なら自分で説明できる。

以上