災害に負けない地域社会へ!−台風ヨランダ災害復旧・復興支援プロジェクト終了−

2017年1月27日

2013年11月8日に、100年に一度といわれる超大型台風が、フィリピンに甚大な被害をもたらしました。JICAでは、台風被災地の早期復旧・災害に強い地域社会の復興のため、2014年2月から最も被害の大きかったレイテ島およびサマール島沿岸地域を対象に、台風ヨランダ災害復興支援プロジェクトを開始しました。

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ハザードマップを使った土地利用計画改訂支援

本プロジェクトでは、日本の災害復興の経験を踏まえ、ハザードマップを作り、同マップを活用した復興計画作り、自治体への土地利用計画の改訂、防災計画づくりを支援。また、現在も続く現地の病院、庁舎などの建設を含む無償資金協力の計画作り、早期の災害に強い公共施設再建と技術訓練、被災者の生計回復(クイックインパクトプロジェクト)などの支援を行ってきました。

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被災直後

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プロジェクトによる再建後の国立農業学校

宮城県東松島市など、東日本大震災の被災地の協力を得つつ実施してきた本プロジェクトですが、2017年1月をもって終了します。そこで、1月17日に被災地であるレイテ州パロ町で、19日はマニラで、それぞれ被災地の自治体や国の出先機関、国際機関などの関係者が参加し、プロジェクト終了会合が開催されました。会合では、本プロジェクトの協力先である、被災地の自治体や国の出先機関代表者から、安全な町づくり、人材育成、地場産業や生計向上などの取り組み、残る課題への行動計画などが共有されました。
日本では、東日本大震災をはじめ、多くの被災地では、災害からの復旧・復興に今日もなお多くの人々が取り組んでいます。復興への道のりは決して短くありません。フィリピン国家経済開発庁から、国際社会、フィリピン政府、被災地の人々の尽力により、台風ヨランダ被災地の社会経済状況が上向いているとの報告がありました。そして、災害に強い地域社会づくりをさらに発展させるために、フィリピン政府は被災地の人々とのたゆまぬ努力を続けていくとの意思表明もありました。プロジェクト会合の間、これまでにプロジェクトチームが、現地の様々な関係者と対話を深めてきたシーンが次から次へと頭に浮かんできました。本プロジェクトで築かれた現地の人々との関係と、共に学んだ知見をもとに、今後も絶え間なく復興に取り組むことが確認され、プロジェクト会合は終了しました。

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会合で説明する産業貿易省次官(マニラ)

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フィリピン関係者との終了会合後の集合写真(パロ町)

終了会合の前後に、本プロジェクトで再建した市場、保健所、学校、女性の食品加工支援、養殖など様々な事業の現状を視察する機会を得ました。そのうちのひとつであるレイテ州ドラグ町の母子保健所を訪問したときのことです。保健所のドクターから話を聞くことができました。「台風ヨランダが最も接近したとき、保健所の屋根が飛び、床は浸水しましたが、それでもここでけが人の治療を一日中続けました。(本プロジェクトで)再建された保健所は、現在24時間体制で対応しています。台風ヨランダ前は、1日の診察人数が、50人程度だったのが、今では1日に100人以上の女性を診察しています。隣町から来る女性も増えています。これからは、スタッフの増員が最も重要な課題です。」
ドクターの診察室の隣の部屋では、前日出産したばかりの母娘が、ベッドで休んでいました。この保健所からまた新しい命が誕生しました。お母さんになった女性の穏やかな顔が印象的でした。生まれてきた子どもたちに、未来への灯りが照らされ続けるように、被災地の人々は今日も、前に進んでいます。
プロジェクトは終わりますが、今後も災害に負けない地域社会に向けた、現地の一人一人の新たな復興の展開を追い続けていきたいと思います。

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プロジェクトで再建した母子保健所で出産した母娘(中央)とドクター(右)