インドネシアのコールドチェーン(ワクチン保管専用冷蔵庫・冷凍庫など)の適正な使用・維持管理に向けて指導者育成研修(TOT)を開催しました

2022年10月27日

2022年10月26日~27日

インドネシアでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数は減少傾向にありますが、小幅な増減を繰り返しており下げ止まりの状況にあります。

2022年10月31日時点で全国の新規感染者数は2,457人、1日当たりの死亡者数は34人となっています(注1)。

さらに、新型コロナウイルス感染症は通常の予防接種事業にも影響を与えています。

新型コロナウイルス感染症が深刻だった2020年7月の小児に対する定期予防接種活動は、コミュニティのヘルスセンターレベルで通常の55%まで停滞したとの報告もあり、小児の健康や成長への影響が懸念されています(注2)。

JICAは技術協力プロジェクト「インドネシア国新型コロナウイルス及びその他感染症ワクチン管理能力強化プロジェクト」を通じて、インドネシア保健省の新型コロナウイルスワクチン接種及び定期予防接種の取り組みを支援しています。本プロジェクトでは、電圧の変動や停電があっても内部温度を適正に保つことができるワクチン保管専用冷蔵庫「アイスライン式冷蔵庫」330台(デンマークVestfrost社製)を、ユニセフ協力のもと調達しています。

さらに冷蔵庫本体だけでなく、電圧を安定させ温度を訂正に保つための電圧安定装置や、温度監理を行うためのモニタリング装置(温度データロガー)、コンプレッサーや内蔵温度計などのスペアパーツも同時に供与する予定です。アイスライン式冷蔵庫は、小児に対する定期予防接種ワクチンだけでなく、冷蔵温度(2~8℃)で保存可能な、新型コロナウイルスワクチンの品質管理にも適しています。

またJICAは機材供与に先立ち、技術面での能力強化にも取り組んでいます。

JICA専門家はインドネシア保健省と協働して、新型コロナウイルスワクチンの適正な温度管理、アイスライン式冷蔵庫の特徴や日常保守管理、コンプレッサー交換技術などに関する、2日間(10月26日、27日)の指導者育成研修(TOT)を開催しました。

研修にはワクチン冷蔵庫を供与予定の22州のうち、供与台数の多い(33台)西カリマンタン州の6地域、西ジャワ州の1地域の合計7地域から、ワクチン管理者及びコールドチェーン機材の維持管理技術者の合計13名が研修に参加しました。さらに、研修会場となったCimahi 1 Technical High Schoolの冷凍空調専攻の学生64名が、アイスライン式冷蔵庫の講義に聴講参加しました。

本研修では、Vestfrost社製ワクチン冷蔵庫の原理・操作・日常保守・トラブルシューティングなどの講義を行うとともに、デジタルパーツやコンプレッサー交換技術の実演などを行いました。コンプレッサー交換は従来の不燃性冷媒ガス(代替フロン)ではなく、R600a(イソブタン)コンプレッサーを対象としました。R600 aコンプレッサーは、地球温暖化係数が低い一方で、強燃性であることから取り扱いに特別な注意を必要とします。

また、電圧安定装置及び温度データロガーの概要、使用法などについても講義・実演しました。

研修2日目の午後には、西ジャワ州保健局が管轄する新型コロナウイルスワクチンの倉庫に移動し、新型コロナウイルスワクチン向け超低温フリーザー、コロナワクチンのパッキング部門などの見学を行いました。見学会場では、にワクチンの適正な品質管理やワクチンコールドチェーン機材の維持管理方法などについての説明を受けました。

さらに研修では、参加者によるグループワークが行われました。コールドチェーン機材の配送計画やメンテナンスに関する実務的な議論だけでなく、アイスライン式冷蔵庫が不足している現状、老朽化・故障機材が多いといった課題のほか、新型コロナワクチンの廃棄率を減らすための工夫やコールドチェーン機材に関する研修のニーズなど、積極的な意見交換が行われました。

研修参加者からは、「コンプレッサー交換は難しい」「スペアパーツや修理工具が欲しい」という意見があった一方で、「コールドチェーン機材の維持管理に関する初めての研修で有益である」「より研修期間が長く参加者数の多い研修をシリーズ化して欲しい」といった、積極的な要望もありました。

JICA専門家チームは、本研修のPR用ビデオを作成しています。PR用ビデオは研修に参加することが出来なかった中央保健省及び地方保健局などの関係者に当日の様子を報告するだけでなく、本研修の参加者が各担当地区で、カスケード研修を実施できることを目的として活用されることが期待されています。

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Short version

新型コロナワクチン接種対象年齢層の拡大や追加接種の実施に伴うワクチンコールドチェーン機材の需要が世界的に急増するなか、JICAや他のパートナーが供与したコールドチェーン機材の適正な使用及び維持管理の重要性が増しています。

JICAはインドネシアを含む東南アジア諸国における新型コロナワクチンや定期予防接種率の向上、ワクチン品質管理の強化を支援すべく、機材供与と技術支援のスキームを組み合わせた効果的な取り組みを継続していきます。

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アイスライン式冷蔵庫の基本構造及び特徴などの講義

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冷媒配管の溶接技術の練習

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コンプレッサーへのサービスバルブの取り付け

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電圧安定装置の動作原理、必要性、修理技術等の講義、実技

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西ジャワ州のCOVID-19ワクチン倉庫の見学

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ウルトラコールドチェーン(インドネシア製の超低温冷凍庫)