インドネシアに供与した酸素濃縮器の適正な使用・維持管理の実施に向けて指導者育成研修を開催しました

2022年11月7日

インドネシアでは再び新型コロナウイルス感染症が増加しています。

新規感染者数は、3月22日以来約4か月ぶりに6,500人を超え、累計患者数は623万人以上にのぼっています。(8月4日時点)

新型コロナウイルス感染症対策にかかるインドネシア保健省の取り組みを支援するため、JICAは2021年7月より、米国NIDEK Medical社製の酸素濃縮器400台の緊急調達を開始、2021年11月にそのすべてを保健省に引き渡しています。同支援の実施に際しては、JICAが現在実施している技術協力プロジェクト「地方分権下における母子健康手帳を活用した母子保健プログラムの質の向上プロジェクト」を通じて行いました。

緊急支援により供与された酸素濃縮器を、医療施設の関係者が適切な知識のもとで活用することができるよう、JICA専門家(医療機器修理技術者)が、インドネシア保健省医療施設リフェラルシステム部(以下、保健省)および、ジャカルタ首都特別州保健局と協働し、7月12日・7月13日の2日間にかけて、JICAが供与した酸素濃縮器の適正な使用・運用・維持管理の能力強化月を図るための指導者育成研修(Training of Trainers, 以下TOT)を開催しました。

研修にはJICAが酸素濃縮器を供与した7州のうち、供与数が最も多い(70台)ジャカルタ西部地域の3病院、また4箇所のプスケスマスと呼ばれるヘルスセンターの計7保健医療施設より、医療従事者および医療機器修理技術者の管理者の合計15名が参加しました。

研修では、JICAの技術協力プロジェクト「新型コロナウイルス感染症流行下における遠隔技術を活用した集中治療能力強化プロジェクト」などの相手側機関であるインドネシア大学病院の医師や、保健省が管轄する医療施設安全管理センター(Balai Pengaman Fasilitas Kesehatan, BPFK)、JICAが供与した酸素濃縮器の現地サービス会社であるPT Global Promedika Serviceからの技術協力のもと、研修が実施されています。

インドネシアでは、その基本構造や機能などが異なる多様なモデルの酸素濃縮器が使用されているため、ユーザーは操作方法に不慣れであることが明らかとなっています。また、人材及び予算の不足などにより、内部HEPAフィルターの交換・定期清掃、ファン、電子パーツなどの交換修理ができないといった、機材メンテナンスにおける医療機器技術者の課題を有しています。さらに医療従事者からは、病院の機材が不十分なために、古い酸素濃縮器やHFNCでは適正な酸素を患者に供給できているかどうか不安といった、使用に際しての課題の声が挙がっており、酸素濃縮器の適切な使用に関する能力強化が必要であると考えられます。

本研修では、酸素濃縮器及び新型コロナ感染症患者の治療向け高流量カニュラ酸素療法(HFNC)の原理・操作・日常保守・トラブルシューティング・キャリブレーション(調整)、消耗品やスペアパーツの購入に係る講義及び実習を行いました。グループワークも実施され、技術者の指導のもと、各グループが実技体験を行うとともに、研修参加者間での学び合いが行われました。

研修前後の研修参加者の知識レベルの変化を把握するためのプレテスト、ポストテストも研修で実施されています。また研修に参加出来なかった関係者には、動画により当日の様子を紹介すると共に、参加者からの研修評価結果などを報告しました。

新型コロナウイルス感染症の深刻な状況が続くなか、JICAが酸素濃縮器を供与した残る6州に対して、集合型でのTOT研修を計画的に実施するのは感染防止の観点からも容易ではなく、引き続き慎重に状況を見定めながら研修を実施しなければなりません。しかしながら、JICAはインドネシアの新型コロナ感染症の感染拡大防止や治療能力の強化を支援するため、感染防止に留意した上で、より効果的な人材育成への取り組みを継続して行きます。

【画像】

JICAが供与したNidek社製酸素濃縮器(Nuvo Lite, Nuvo 8)の概要、仕様、使用方法等の説明

【画像】

酸素濃縮器のキャリブレーション(酸素濃度測定、酸素流量測定、湿度など)

【画像】

グループワーク(HFNCトラブルシューティング)

【画像】

集合写真(コロナ感染予防につき広い会場を使用)