支所長あいさつ

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ニジェールは、国土の3分の2が砂漠で覆われた内陸国で、人口は約2千100万人。降水量が乏しく砂漠化の脅威や干ばつにたびたび見舞われる厳しい自然環境にあります。
耕作可能な土地も1割程度と少ないなか、8割の住民が農業に従事していますが生産は不安定で食料の安定確保が大きな課題となっています。
1人当たりの国民所得は370ドル程度で、国連による人間開発指数では188か国中下から2番目と最貧国のひとつに数えられています。

日本は1976年以来、継続的な食糧援助に加え、医療施設・機材整備や地下水開発、小中学校の建設などの無償資金協力や、学校運営の改善、理数科教育の質の向上、医療人材、農業普及員の育成、日本への技術研修員の受入れなどの技術協力を実施してきています。
1985年から派遣してきた青年海外協力隊員は700名を数え、厳しい環境のなか各地で地元住民とともに生活しながら協力活動に情熱を傾け、草の根レベルでニジェールと日本との信頼関係を築いてきました。しかしながら、2007年ごろから国際テロ組織が地域での勢力を強め、2011年1月に発生したニアメ市内での外国人誘拐殺害事件を受け、滞在中の70名を超える協力隊員は引き揚げざるを得なくなりました。
その後も、不安定なサヘル地域情勢が続いており、7か国と国境を接するニジェールには南部、西部からの国境を超えたテロ活動がたびたび起きており、援助活動も制限を余儀なくされています。
ニジェール政府は、欧米諸国の協力を得て治安対策に重点的に取り組む一方、「経済社会開発計画(2017-2021)」を策定し、食料安全保障の達成や、基礎的社会サービスの拡充に取り組んでいます。
そのような状況で、JICAはニジェールとの協力関係とこれまで培われてきた絆を途切れさせないよう工夫しながら活動を続けています。
「教育へのアクセス・質の向上」「農村開発を通じた食料安全保障の達成」「サヘル地域の平和と安定のための支援」の3つが協力の重点分野です(具体的なプロジェクト活動を是非本HPでご覧ください)。キーワードは参加型。現下の安全対策上、日本人のニアメ市外への活動が制限されるなか、ニジェール関係機関や国際機関と緊密な人脈を築き、コミュニティとの関係を大事にし、活動を展開しています。
そこでは、かつてニジェールで活動した協力隊員経験者の専門家も仏語、現地語を屈指して活躍しています。

ニジェールにおいて日本の協力を振り返るとき、JICA専門家であった期間を含め30年以上にわたり地方の外科医療人材の育成に尽力され2017年3月に当地で逝去された谷垣雄三先生を忘れることはできません。
様々な人々の努力により信頼関係が築かれてきたニジェールとの関係を一層発展させられるよう、関係機関とも協働しながら、JICAはニジェールにおける「人間の安全保障」への貢献と「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に向けて取り組んでまいります。

ニジェール支所長
小畑 永彦