第10回日本語スピーチコンテスト開催

2019年6月10日

2016年度4次隊
日本語教育
田中 千晴

5月8日(水)トンガタプ島ヌクアロファにあるセント・アンドリュース高校のホールにて、在トンガ日本国大使館主催による第10回日本語スピーチコンテストが開催されました。コンテストは主に日本語を学習する生徒を対象に、高校1年生(Form4)、2年生(Form5)、3年生(Form6)、Open Category(Form7+一般)の4部門に分かれて行われ、審査の結果、1年生の部はトンガ高校のラトゥ マフィさん、2年生の部はタイルル・カレッジ・ババウのイレイサーネ カトゥオトゥアさん、3年生の部はエウア高校のセラ カウマタイリさん、Open Categoryの部はババウ高校のコニフェレニシ フィフィタさんが、それぞれ1位を受賞しました。そして国際交流基金の訪日研修を獲得したのは現在日本語教師を目指し教員養成学校で勉強しているラタイ トルタウさんでした。また同時にJICAトンガとトンガ日本語教師会共催による書道コンテストも開催され、会場には日本語を学ぶ生徒たちの作品が展示されました。

出場者とテーマ

今年は中等学校6校と日本語課程のある教員養成学校で日本語を学ぶ、計22人が出場しました。高校1~3年生の3部門においては各校で選抜された者が、Open Categoryの部においては基本的に希望者全員がコンテストに挑みました。テーマは、高校1年生の部は「いろんなおとのあめ」の朗読、2年生の部は「私の好きな場所」、3年生の部は「私の好きな言葉」、Open Categoryの部は自由テーマでした。

全体を通して印象深かったのは、1年生の部の「いろんなおとのあめ」の朗読と3年生の部の「私の好きな言葉」でした。「いろんなおとのあめ」には様々な擬音語が入っています。それらを出場者は思い思いの捉え方で上手に表現し、その表現する音の可愛らしさに思わず笑ったり、ほっこり癒されたり、コンテストの中で一番の盛り上がりを見せていました。3年生の部の「私の好きな言葉」では、5人中3人が「母」、1人が「父」を挙げていました。それぞれ母や父への感謝や日頃の思いを語り、トンガ人の深い家族愛を改めて感じました。翌々週には「母の日」、母の日の翌週には「父の日」があり、それぞれ良いプレゼントになったのではないでしょうか。

緊張感漂う中でのスピーチ

会場は緊張感が漂い、出場した生徒たちはその緊張感との闘いでもありました。そのため最後まで堂々と発表できる生徒もいれば、緊張で内容を忘れてしまい、日頃の成果を発揮できずに悔し涙を流す生徒もいました。そんな生徒たちの一生懸命なスピーチを会場にいた誰もがハラハラドキドキしながら見守り、生徒が内容を忘れる度に、「ガンバレ」「ガンバレ」という心の声があちらこちらから聞こえてくるような温かい雰囲気に包まれたコンテストでもありました。

みんなにとって貴重な体験の場

スピーチコンテストは日本語を勉強している生徒にとっても教えているトンガ人教師や協力隊にとっても貴重な体験の場です。

出場者にとっても

日本語に触れる機会が少ないトンガにおいて、コンテストは日頃の日本語学習成果を発表できる貴重な場です。また過去の出場者の中には日本語教師になる者や日本留学をする者もおり、コンテスト出場は日本語や日本に対する興味をより深めるきっかけとなり、その後の進路を左右する場合もあります。果たしてこの中から何人、両国の友好の懸け橋となる者が現れるでしょうか。楽しみです。

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スピーチ中

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出番を待つ出場者

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出番を待ちながらも笑顔が浮かぶ出場者

日本語教師にとっても

今年はトンガ人教師が指導する生徒が多数入賞しました。それは彼女たちにとって日本語という外国語を教える自信や遣り甲斐になることはもちろん、協力隊にとっても喜ばしく、トンガにおける日本語教育の未来に一筋の光明が感じられる結果でした。今年のTシャツには「‛OKU MAU NGÃUE FAKATAHA(一緒に働こう)」という言葉が入っています。この言葉には教師同士が、或いはトンガ人と日本人が協力し合いながら、良好な関係を築こうというメッセージが込められています。コンテストは「‛OKU MAU NGÃUE FAKATAHA(一緒に働こう)」が直接実感できる数少ない場でもあります。

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‛OKU MAU NGÃUE FAKATAHA(一緒に働こう)と参加校の名前が書かれたTシャツ

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日本語を教える各校の教師たち

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二人の入賞者とその教師

出場者以外の日本語を学ぶ生徒にとっても

トンガタプ島にある中等学校で日本語を勉強している生徒は全員コンテストに集合します。その中には日本語で「こんにちは」「お名前は何ですか」と覚えた日本語を積極的に使用してくる生徒もいます。コンテストに出場せずとも、コンテストの雰囲気を味わうことで次回参加への動機付けになったり、習った日本語を試すことで日本語の学習意欲を高めたりすることができるのもコンテストの魅力です。

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真剣にスピーチに耳を傾ける生徒たち

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こんにちはと声を掛けて来た生徒たち

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Tシャツを見せポーズする生徒

書道コンテストも同時開催

同時に書道コンテスト(JICAトンガとトンガ日本語教師会の共催)も開催されました。今年の文字は、中学3年生(Form3)は「そら」、高校1年生(Form4)は「光」、高校2年生以上(From5以上)は「青空」でした。日本文化体験の1つとして日本語を学習している生徒全員が書道コンテストに参加しました。審査は事前に行われ(各文字1~3位)、当日1~3位の入賞者が表彰されました。

今回初めて書道に挑戦する生徒もいれば、経験豊富の生徒もいます。そんな生徒たちの作品は全て会場に展示され、自由に見ることができます。生徒たちの作品を見ているとあることに気づきます。中学3年生は初めて筆を握るため線が細く頼りない作品が多いのですが、学年が進むにつれ、筆使用にも慣れ、線は力強く勢いのある堂々とした作品が増えていきます。そういった生徒の成長を書道コンテストで見ることもできます。

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中学3年生:1位

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高校1年生:1位

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高校2年生以上:1位

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トンガ高校生徒の作品

願いを込めて

スピーチコンテストの最後に出場者や審査員が集合して写真を撮りました。どの生徒たちも緊張感から解き放たれステキな笑顔をしています。しかしながら、その笑顔の裏には満足感、達成感、安堵感、悔しさ、様々な思いが入り混じっていたと思います。生徒たちにはこの日感じた様々な思いを忘れずに、今後の日本語学習の糧にしてほしい、そしてどんな関わり方でもいい、トンガと日本の友好を深める存在になってほしい、そう切に願います。入賞者の皆さん、おめでとう。出場者の皆さん、ありがとう。応援に来てくれた皆さん、ありがとう。

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出場者及び審査員の皆さん

1位受賞者のコメント

最後に、各部門の1位受賞者及び訪日研修獲得者のコメントを紹介します。

高校1年生の部:トンガ高校Form4 ラトゥ マフィさん

私にとって日本語スピーチコンテストは思い出に残る経験になりました。私はたくさんの素敵な日本人と出会い、刺激され、日本や日本語に対する興味も深まりました。1位受賞に感謝します。ありがとうございます。

高校2年生の部:タイルル・カレッジ・ババウForm5 イライサーネ カトゥオトゥアさん

とても驚きましたが、とても嬉しかったです。練習の成果が発揮でき満足しています。自信も付きました。来年も頑張ります。私も日本に行くチャンスを掴みたいです。

高校3年生の部:エウア高校Form6 セラ カウマタイリさん

怖さもありましたが、自分のスピーチができた時は幸せでした。3位、2位と発表された時、私はもう入賞は無理だと思いました。だから1位で名前が呼ばれた時は驚きました。私はこのスピーチを母のためにし、勝つことができました。私以上に両親が喜んでいます。

一般の部:ババウ高校Form7 コニフェレニシ フィフィタさん

1位を取れて嬉しいです。もしも訪日研修に申し込んでいたら...、日本に行く機会を得られていたかもしれません。残念です。

訪日研修獲得:教員養成学校Year1 ラタイ トルタウさん

日本語スピーチコンテストに参加したことは私にとって忘れられない思い出となりました。名前を聞いた時は嬉しさも驚きもありました。夢が叶いました。皆さん、特にあゆみ先生、ありがとう。