2019年11月6日
2018年度3次隊
珠算
前田 大志
6月下旬から9月上旬までの約2か月間、在トンガ日本大使館と私の配属先である教育訓練省の共催で、本島と離島を合わせ、計6回のそろばん地方大会を開催しました。トンガでは算数能力の向上を目的に、1989年から珠算ボランティアが継続的に派遣されています。そろばんはトゥポウ4世(現在は、トゥポウ6世)によって導入されました。日本人のそろばん指導者とトンガ政府高官が飛行機の機内で知り合ったことがきっかけで、トゥポウ4世にそろばんのことが伝わりました。そんな偶然が、30年続くトンガでのそろばん教育につながっています。現在では、学校や街で「ソロパニ(トンガ語でそろばん)」と声をかけてもらえるほど、トンガではそろばんが浸透しています。2005年に初等教育課程のカリキュラムに組み込まれ、2009年からは小学校3年生から5年生の算数における必修単元となりました。私は、珠算隊員の1人として、首都のあるトンガタプ島でそろばん教育の質向上に努めています。
今回行われた地方大会は、全国大会への登竜門であり、成績上位者は来年3月に開催される全国大会への出場権を得ます。出場者は、総合競技、読み上げ算、フラッシュ暗算(個人戦)、学校対抗の団体戦で凌ぎを削りました。成績上位校では、問題を難しくしたのにも関わらず平均点が向上したり、フラッシュ暗算では3桁の問題を正答するなど、トンガのそろばんのレベルが向上していることを感じました。一方で、成績下位校では点数が芳しくない学校も多く、トンガの珠算教育の抱える課題が浮きぼりとなる大会でもありました。しかし、成績はさておき、そろばんに向かい真剣な表情をする生徒や、大会を終えて達成感に包まれた表情の先生を目にし、私自身が励まされ、活動への活力を頂いたそろばん大会でした。
今後は、3月に開催される全国大会に向けた練習のサポートをするとともに、1人でも多くの生徒がそろばんを楽しめるような授業を教育省職員、トンガの先生、そして他の珠算隊員と手を取り合い、頭を突き合わせて、考えていきたいです。私は先月から、希望する生徒や先生を対象に、放課後の空き教室を利用したそろばん塾(教室)を始めました。そろばんの知名度だけでなく、そろばんに対する意識を、家庭を始めとする地域コミュニティから向上させ、オールトンガでそろばん教育を盛り上げていけると嬉しいです。