UHCフォーラム2017開催:すべての人の健康の実現に向け、「UHC東京宣言」を採択。北岡理事長が登壇し、JICAの取り組みの強化を表明

2017年12月15日

国際協力機構(JICA)は、12月13日、14日、東京プリンスホテルにて、「UHCフォーラム2017」を財務省、外務省、厚生労働省、世界銀行、世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)、UHC2030(注1)と共催しました。安倍晋三首相、就任後初の来日となったアントニオ・グテーレス国連事務総長をはじめ、各国の政府高官や国際機関等の代表、専門家が一堂に会する中、2030年までのUHC達成に向けたコミットメントとして「UHC東京宣言」が採択されました。

UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)とは、全ての人が、必要とする質の高い基礎的な保健医療サービスを、負担可能な費用で利用できる状態のことです。13日に公表されたWHOと世界銀行による「2017 UHCグローバルモニタリングレポート」によると、全世界では未だ人口の半分(35億人)が質の高い健康を守るための基礎的サービスにアクセスできておらず、8億人が世帯総支出の10パーセントを超える医療費負担を経験しており、毎年1億人近くが医療費負担が原因で貧困化しているとされています。こうした中、UHCは、国際社会が協力して実現を目指すことが合意された「持続可能な開発目標(SDGs)」(注2)のターゲットの一つともなっています。

今回のフォーラムは、SDGsの目標年である2030年までのUHC達成に向け、具体策を議論する目的で開催されたものです。JICAは13日、14日の本会合で北岡伸一理事長、戸田隆夫上級審議役が登壇したほか、12日、15日には公式サイドイベントを主催・共催しました。

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共催機関登壇者らと北岡理事長

1.本会合(13日、14日)

14日午前のハイレベルオープニングセッションには、安倍首相の基調講演に続き、アントニオ・グテーレス国連事務総長、マッキー・サル・セネガル大統領、ティン・チョウ・ミャンマー大統領、ビル・ゲイツ・ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同議長(ビデオメッセージ)、ジム・ヨン・キム世界銀行総裁、テドロス・アダノムWHO事務局長、アンソニー・レークUNICEF事務局長、横倉義武世界医師会長らとともに、北岡理事長が登壇。各国・各機関のリーダーとともに、UHC推進に向けた取り組みを強化していくことを力強く宣言しました。

北岡理事長のスピーチの様子

北岡理事長は、健康は全ての人の基本的な権利であるとともに、日本の1961年の国民皆保険達成が高度経済成長の本格化の原動力になった例を示しつつ、健康が社会の安定と経済の成長に貢献するものであることを強調。また、健康を守るためには国、民族、宗教の違いを超えて協力する必要があることから、健康は世界をつなぐものであり、さらには安全な水や衛生設備、栄養、教育などあらゆる対策を講じてUHCの実現を目指すことで、幅広い分野でのSDGsの達成に貢献することに言及。JICAが現在世界140ヵ国以上で実施する、人々の健康につながる分野での協力を、今後も推進していくことを表明しました。

14日夕方のクロージングセッションでは、フォーラムの成果として、2030年までのUHC達成に向けたコミットメントとしてグローバルなモメンタムの強化、各国主導のプロセスの加速化、イノベーションを柱とする「UHC東京宣言」を採択。加藤勝信厚生労働大臣による宣言の紹介に続き、北岡理事長は、人間の安全保障や人間中心の開発をJICAは大切にし、それを体現するUHCを推進してきたことを強調。同宣言に沿った今後のJICAの役割として、(1)グローバルなモメンタム強化のリーダーシップの一翼を担うこと、(2)他の開発援助機関や市民社会、民間部門と協働すること、(3)イノベーションを促進するための研究機関や民間部門との協力を強化すること、を約束しました。また、麻生太郎副総理・財務大臣が閉会挨拶を行い、UHCに向けた財源確保のために各国の財務大臣の関与が不可欠であること、革新的なファイナンス手段を含め国際的な援助資金を効果的に活用していくことも重要であることを強調しました。

なお、ハイレベルセッションに先立ち13日に開催された専門家会合では、世界のUHC及び公衆衛生危機対応への進捗状況や、UHCに関する国際的な各種イニシアティブの紹介が行われたほか、UHCの重要な課題である保健システム・保健人材の強化・UHCのファイナンス・医薬品アクセス・高齢化社会の保健ニーズなどについて議論するテーマ別分科会が開催されました。JICAの戸田上級審議役はオープニングセッションに登壇し、格差の是正とセクターを超えた取り組みの必要性に触れ、JICAがUHCのムーブメントに積極的に参画することを表明しつつ、学び合いの更なる促進と協働によりUHC達成を現実にしていくことを呼びかけました。

2.サイドイベント(12日、15日)

Africa CDCとの協力趣意書への署名

JICAは4つのテーマ((1)健康危機対応・感染症ラボネットワーク、(2)セネガルでの家計調査を活用したUHCモニタリング、(3)母子継続ケア強化によるUHCへの貢献、(4)タイでのUHCに向けたデータ活用)でサイドイベントを主催・共催し、JICAの取り組みを紹介。(1)のサイドイベントでは、米国国際開発庁(USAID)、米国疾病予防管理センター(CDC)の同席の下、アフリカにおける健康危機対応能力の強化を目的としたアフリカ疾病予防管理センター(Africa CDC)との協力趣意書(Letter of Intent)への署名式を併せて執り行いました。

このほか、他機関主催の6つのサイドイベントにも登壇し、UHCの実現に向けた取り組みに関して活発な発信と意見交換を行いました。

3.要人との面談

テドロスWHO事務局長との面談

レークUNICEF事務局長との面談

北岡理事長は、フォーラムに併せた来日の機を捉え、グテーレス国連事務総長、キム世界銀行総裁、テドロスWHO事務局長、レークUNICEF事務局長、マーク・サズマン・ビル&メリンダ・ゲイツ財団最高戦略責任者・最高責任者らと面談。UHC達成に向けては、保健セクターにとどまらないマルチセクターの取り組みが重要であるとの認識のもと、幅広い分野で各機関との協力や連携を進めていくことを確認しました。

今回、グテーレス国連事務総長が就任後初の来日として本フォーラムを選択したことは、UHC達成に向けたマルチセクターの取り組みや、SDGsの達成におけるUHCの重要性を示唆しており、意義深い機会となりました。

JICAは「UHC東京宣言」を踏まえ、グローバルなモメンタムの強化に日本政府及び他の開発援助機関と共に取り組みます。また、より多くの人々に基礎的保健医療サービスや医療保障を届けるため、技術協力・資金協力を組み合わせた途上国への支援を加速していきます。

(注1)UHCの推進を目指し、参加国・機関・団体等による取り組みの調整・協調を図ることを目的に設立された国際的なプラットホーム。2017年からは、JICAの戸田隆夫上級審議役がUHC2030運営委員会の共同議長を務めている。

(注2)Sustainable Development Goalsの略。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016年〜2030年までの国際目標。17のゴール、169のターゲット、244の指標で構成され、地球上の誰一人として取り残さないことを誓っている。

関連リンク:

JICA主催・共催公式サイドイベントの記録

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