UHCフォーラム2017ハイレベルオープニングセッションでのスピーチ【於:東京プリンスホテル】

2017年12月14日 UHCフォーラム2017 理事長発言要領

(UHC Forum 2017オープニング、東京プリンスホテル、9:30〜10:30)

  • 安倍晋三日本内閣総理大臣、マッキー・サル・セネガル大統領閣下、ティン・チョウ・ミャンマー大統領閣下、アントニオ・グテーレス国連事務総長閣下、ジム・ヨン・キム世界銀行総裁、テドロス・アダノムWHO事務局長、アンソニー・レークUNICEF事務局長、横倉義武世界医師会長、国際保健リーダー、参加者の皆様。2015年から2年を経て、私たちは再びここに集っています。この間の大きな進展を振り返り、UHC推進への新たな決意を表明できることを大変嬉しく思います。
  • 健康は、全ての人の基本的な権利です。誰一人取り残されるべきではありません。女性、子ども、性的少数派、高齢者、障害者、移民・難民。世界には、不安の中で暮らしている人々がたくさんいます。UHCは、全ての人々の健康を守り、必要な時には十分な医療を受けられる安全を与えます。安全こそが、明日への活力、希望につながるのです。私たちがここにいるのは、世界に希望を届けるためです。
  • 健康は、社会の安定と経済の成長に貢献します。MDGは、母子保健や感染症対策の飛躍的な拡大、それによるお母さんや子供の死亡率の削減という大きな成果をもたらしました。しかし、その陰で健康格差が拡大しています。健康格差の拡大は、社会を不安定にしています。UHCは、健康格差や医療費負担による貧困化を是正し、所得の再分配に貢献し、国家と市民の信頼構築や社会の安定化をもたらします。1961年に国民皆保険を達成した日本の経験が示すように、UHCを通じた社会の安定こそが、持続的な経済成長の鍵となります。日本の高度経済成長は、UHC実現後に本格化しました。日本におけるUHCは、経済成長の果実ではなく、経済成長の原動力となりました。
  • これらの日本の経験を生かし、JICAはセネガルで、貧困層を含む全ての国民に健康保険を普及するサル大統領閣下の取組みを支援しています。ミャンマーでは地方部での包摂的な医療サービスの提供を支援しています。他にも、ベトナム、インドネシア、南アフリカ、エジプト、ケニアなど、たくさんの国がJICAを通して日本の経験や世界各国の経験を学び、UHCの推進に取組んでいます。私は日本が世界のUHC推進に貢献していることを誇りに思います。
  • 健康は、世界をつなぎます。UHCの推進には、市民団体や学識者、民間部門の参加が不可欠です。グローバル化の進展は、国境を超えた感染症のアウトブレークという、新たな脅威をもたらしています。私たちは、人々の健康を守るために、国、民族、宗教の違いを超えて協力しなければなりません。TICAD VIでは、実に多様なアフリカ53か国が団結し、「UHC in Africa」という共通の枠組みを打ち立てました。日本発の母子手帳は、インドネシアやパレスチナ自治区をはじめ世界の約40か国・地域のお母さんに配られています。これは、未だ世界中の妊婦の僅か7%に過ぎませんが、WHOと協働して、母子保健の国際標準に含めるための最後の詰めをしています。また、JICAは、このフォーラムを機に、アフリカ諸国政府が一体となって健康危機対応に取組むために設立したアフリカCDCとの協力合意を締結します。本フォーラムが、UHCに取組む世界の様々な人々の間の結びつきをさらに強めることを望みます。UHCを目的として、私たちは連帯できるのです。
  • 最後に、健康は、医療サービスだけで守られるものではありません。私たちは、安全な水や衛生設備、栄養、教育など、あらゆる対策を講じて、人々の健康を守る社会づくりに取り組まねばなりません。特に、「予防は治療に勝る」のです。そのためには、医療分野以外のさまざまな分野を含めた協力が不可欠です。本日この場に、関係国際機関の長に加え、グテレス国連事務総長閣下がおられることを改めて心から歓迎したいと思います。健康を守る社会を築くことが、高齢化による医療費の高騰など、全ての国が必ず経験する課題に対しても砦となります。UHCは、包括的な社会開発や質の高い経済成長の呼び水となり、幅広くSDGsの達成に貢献するのです。
  • JICAは、世界中の途上国140カ国以上と、保健、水衛生、栄養分野で協力しています。特に、JICAの強みは、日本の経験や教訓を生かし、途上国各国の人々と同じ目線にたって協力することであります。その強みを生かし、世界のUHC実現に向けて、日本政府、共催機関、参加各国・機関と一層協力していく所存です。
  • ご清聴、有難うございました。