ILOによる児童労働セミナー(国際機関×民間企業 連携事例共有)を行いました

2023.08.10

概要

日時:2023年7月21日(金)15:00-16:30
会場:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 会議室/オンライン:Zoom

登壇者(敬称略)

国際労働機関(ILO)駐日代表  高﨑 真一
アフリカ地域総局  小笠原 稔

内容

当機構は2023年1月に国際労働機関(以下、ILO)と連携協定を結び、「ビジネスと人権」の分野において、連携を強化することを合意致しました。それを踏まえ、サステイナブル・カカオ・プラットフォームではこの度、ILOの駐日代表 高﨑様と、アフリカ地域総局 小笠原様を登壇者としてお招きして児童労働に関するセミナーイベントを開催する運びとなりました。当日は会場とオンライン参加を含め70名超が参加され、開催後アンケートより「根本的な問題解決のための取り組み事例を沢山聴くことができて参考になった」「ILOや行政、民間等の多様なステークホルダーの協働が必要であることが分かったが、その意味でもネットワークを作るいい機会となった」といった満足度の高いお声を頂きました。

画像

全体集合写真

はじめに、ILO高﨑様よりご挨拶を頂きました。ILOは国家に対する取組を行う方針から、今後は民間の企業との連携によって人権の尊重における取組みの実現を目指す方針へ移行しており、日本における急速な取り組みの拡がりを期待している、といったコメントを頂きました。

画像

ILO高﨑様ご挨拶

セミナー本編では、ILO小笠原様より、「ACCEL(アクセル)アフリカプロジェクト」に関するご紹介を頂きました。アクセル・アフリカプロジェクトとは、アフリカにおける児童労働について、特にサプライチェーンにフォーカスした、オランダ政府出資によるプロジェクトであり、大きく以下3つの目標を掲げ各国で様々な取り組みを行っております。

  • 目標1:政策、法的および制度的な枠組みが改善を通じて、グローバル・サプライ・チェーンの児童労働問題に対処する
  • 目標2:サプライチェーンにおける児童労働の根本原因に対処する革新的で証拠に基づく解決法を制度化する
  • 目標3:ナレッジシェアを通じて、より議論を深める

当日は、本プロジェクトの具体例として、コートジボワールにおける農家を対象とした国民健康保険サービスの普及活動や、エジプトにおけるデュアルエデュケーション上の労働安全衛生の保障活動、マラウィにおけるお茶栽培の児童労働撤廃に向けた現地の組合との連携および活動支援、また、マリにおける児童労働に従事していた子どもたちへのノンフォーマル教育の整備等について、現地の課題と活動内容をご共有いただきました。
アクセル・アフリカプロジェクトの第二期においては、今後①児童の保護者の収入向上・ディセントワークの実現、②社会保障の充実、③労働安全衛生、④若者(特に15歳から17歳まで)の雇用について、重点的に取り組みを継続されるとのことです。

また、児童労働課題に対しては、ILOにてChild Labour Platformを形成し、グローバルな好事例の共有や議論を行う場を設定しつつ、今後は特定の国や地域における課題や解決策の共有や意見交換の場を提供していくとのことで、日本企業にもこのようなグローバルなプラットフォームへ是非参加頂きたい、との呼掛けがありました。

画像

ILO小笠原様プロジェクト紹介

最後に、質疑応答の中で、以下のような質疑やコメントが交わされました。※()内は発言者

  • アクセル・アフリカプロジェクトの第一期においては、コロナによりどのような影響を及ぼしたか。
  • 具体的な事例としては、ウガンダでコロナ前後の児童労働の状況のデータをとっていたが、コロナ下で児童労働が増加した傾向にあった。ウガンダはアフリカの中でも徹底的な対策をとり、2年間学校を閉鎖するなどロックダウンを行った。その中で学校に行かない子どもが働き始めたり、その間に多くの女の子が妊娠し、コロナ後も学校に戻ることができず、家事労働等の労働時間が増加したことなどが、統計に表れている。その他の国々のデータはないが、同様のケースにおいて児童労働が増加したと考えている。(ILO小笠原氏)
  • リビングインカムの問題が根底にあり、生計が立つほどの収入さえあれば解決できると思うが、先進国による「与える」形での支援は根本的な課題解決に繋がらない。自立を促すためにも根本的な課題解決に向けて、生産者や小売り等全てのステークホルダーがWin-Winとなるような仕組みをグローバルで考えていく必要があると思う。
  • カカオ買い付け価格については単に価格を上げればよいというものでもない。価格を上げると、生産意欲が高まり生産量が増えるが、その先に労働力の不足から児童労働に繋がりかねない。他の収入源を確保していくというのが解決方法の1つであると思う。また、健康リスクがインカムレベルや児童労働に繋がることからも、健康面の課題への取組も重要であると考えており、多角的に対処が必要と考えている。(ILO小笠原氏)
  • 理念を叫ぶだけではなく、実利を提供していくという意識が必要とされる。人権尊重と経済成長の関係性において、経済成長による人権尊重の流れのみならず、今後は人権尊重による経済成長の流れが実現できるよう、課題解決に取り組んでいくべきである。(ILO高﨑氏)

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn
一覧ページへ