ラオス産バタフライピーを世界へ!独自の加工技術でハーブから天然着色料を -ツジコー株式会社(滋賀県)

2023.10.25

この写真の美しい青色のチョコレート、「幸せを呼ぶ青いチョコレート」と呼ばれています。 実はバタフライピーというハーブの青い花から作られています。滋賀県のツジコー株式会社は、JICAの企業向け支援制度「中小企業・SDGsビジネス支援事業」を活用し、東南アジアのラオスで同国産のバタフライピーなどのハーブを加工し、色鮮やかな天然着色料や健康食品を製造・販売するビジネスを展開しています。

今回はJICA関西の学生インターンが同社の辻昭久会長に海外展開のきっかけや開発途上国におけるビジネスへの想いをお伺いしました。以下は、辻会長からのお話です(編集後記除く)。

バタフライピーを使った青いチョコレート

ツジコーってどんな会社ですか?

ツジコー株式会社は、1963年創立、滋賀県甲賀市に本社を置く照明事業等を行う会社です。元々、滋賀県内の大手企業向けの照明器具等の製造を軸として事業展開をしてきました。取引先の地元工場が海外進出したことを機に、事業の多角化を模索する中で、当社の「植物を非加熱で粉末に加工する技術」を活かし、持続性のある食品製造の事業を始めようと考えました。
現在はその技術力を活かし、小ロットでの野菜・果物・花き類・海産物といった植物の食品原料加工も受託しています。当社の加工技術は、加工の過程で植物に熱を加えないため、その栄養価を失わずに乾燥・粉砕・殺菌・粉末化できることが特長です。

ツジコー株式会社 辻昭久会長

海外展開のきっかけは何ですか?

私が長年問題意識を持っていたことは、合成着色料や食品添加物の利用です。日本では合成着色料が様々な食品に使われており、食事に対する健康意識が他の国に比べて低いという意見もありますので、「子どもたちに安心安全な食品を食べてもらうこと」を理念に食品製造事業を開始しました。
その取り組みの一つとして、「植物を非加熱で粉末に加工する技術」を使って、天然着色料を作ることにしました。原料となる植物を探す中で、ラオスでは完全無農薬でハーブを有機栽培しているという情報を入手しました。

取材の様子

バタフライピーとの出会いはどこですか?

ラオスの情報を入手したのは良かったですが、現地に渡航し、調査を行うことは、当社にとって簡単なことではありませんでした。どうにか現地で調査できないか情報収集したところ、JICAが企業向けの支援を行っていることを知り、応募に向けて準備を進めました。幸運にも、「中小企業・SDGsビジネス支援事業」の案件化調査(当時)に採択いただき、同制度を活用し、ラオスの首都のみならず、北部や南部等、地方でも調査を行いました。ある日、現地の薬草研究所へ出向いた際に様々なハーブを発見しまして、その中に青い花を咲かせるハーブ「バタフライピー」がありました。日本に帰国後、バタフライピーの研究を進める中で、バタフライピーの花を粉末に加工して、天然の青色色素を作るというアイデアが生まれました。

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バタフライピーの花

バタフライピーを加工できるようになったのはいつですか?

アイデアはあるものの、これがビジネスにつながるのかどうか、具体的な検証を行う必要がありました。そこで、次はJICA「中小企業・SDGsビジネス支援事業」の普及・実証・ビジネス化事業に応募、採択いただきました。ラオスに再渡航し、現地でバタフライピーを粉末に加工できるかどうかの技術的な検証や、バタフライピーの粉末を使用した試作品の製造、現地パートナー会社の従業員に対する研修実施や品質管理マニュアルの策定などを行い、ビジネス化に向けた準備を進めていきました。調査終了後、全世界で新型コロナウイルス感染症が流行し、ラオスへの渡航ができない時期が続き、思うようにビジネス化への準備が進みませんでしたが、その間もJICAの調査で構築できた現地の人脈も頼りつつ、なんとか遠隔で準備を続けました。再び渡航ができるようになって以降は、バタフライピー加工工場立ち上げに注力し、2022年にラオスの隣国であるタイで加工工場を設立することができました。これにより、ラオスで収穫したバタフライピーをタイへ輸送し、加工する体制が整いました。

バタフライピーを加工した粉末

海外での販売許可の取得には苦戦されましたか?

「バタフライピーを天然着色料に加工して国内外で販売したい」というビジョンはあったものの、欧米諸国などの一部地域ではバタフライピーの食品としての販売は許可されていませんでした。東南アジア一帯ではバタフライピーはハーブティーの原料として伝統的に使用されていましたが、その生産量や消費量に関する情報が不足していたため、バタフライピーが日常的に安全に使用されているという説得材料に乏しく、欧米では販売が認められていません。
今後、欧米での認証取得に詳しいコンサルタントに相談しながら調査や資料作成をおこない、認められるようにしたいと考えています。
これに先立って、タイの現地法人は、今年(2023年)、食品製造における製品の安全を確保するための衛生管理手法に係る認証(HACCP認証)や、東南アジアのイスラム教徒の多い国での食品販売では必須と言える「ハラル認証」を取得することができました。

開発途上国でのビジネスで大切にしたいことは何ですか?

「一過性にならない事業」を行うことを大切にしています。
製品を開発途上国に販売・普及させるだけでなく、現地の人材に技術移転し、現地で事業を実施できるようにすることで、国として自立できるようになると考えています。自社の製品製造を目的とした支援だけでなく、自立への支援を行うことで、事業も継続性のあるものになると考えています。
そのような考えから、開発途上国の人材育成に力を入れています。タイの工場では現地スタッフを雇用していますし、ラオスではバタフライピーを栽培する農園で障がい者を雇用しています。現地で障がい者支援を行う東京の非営利活動法人に出会い、開発途上国では障がい者が経済的に困窮する立場に置かれるケースが多いということを知り、問題意識を持ったことがきっかけで、バタフライピーの栽培農園を一緒に開設しました。仕事のみならず、生活面でも障がい者のスタッフをサポートしています。 
また、日本(滋賀県)の本社でもミャンマーやベトナムの技能実習生を受け入れており、母国に戻っても日本語の通訳などの仕事ができるようになってもらいたいと思い、より高度な日本語が習得できるよう支援をしています。 
これらを通して、当社と開発途上国の双方に利益が得られていると思います。

ラオスのバタフライピー農園

今後の展望をお聞かせください。

既に国内ではチョコレート等の様々な食品に当社が加工・製造するバタフライピーの天然着色料が使用されていますが、より多くの国にバタフライピーを届けたいと考えています。ラオスではバタフライピーの天然着色料を活用したチョコレートやハーブティー等を販売する計画を立てていますし、欧米諸国向けの製品開発・販売も本格的に進めていきたいと考えています。さらなる展望を言うなれば、色の三原色である赤、緑、青のうち、赤と緑には欧米でも既に販売が認められた天然由来の着色料が存在するため、バタフライピーを青に据え、三原色を揃えて天然着色料で全ての色を網羅できるようにしたいです。

編集後記

新しいことに挑戦する中で困難なことがあるものの、一つ一つの問題に向き合い、乗り越えながら事業を行っている姿に感銘を受けました。取材当日は製造工場の見学や「幸せを呼ぶ青いチョコレート」の試食もさせていただき、製造から商品になるまでの流れも学ぶことができました。
ツジコー株式会社のバタフライピーの海外展開に今後も目が離せません。 

JICA関西は、企業の皆様の海外展開を支援しています。
ご関心をお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
(企業連携課 学生インターン 谷川陽音、手塚響)

辻会長(中央)、学生インターン、JICA関西企業連携課員の集合写真

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