国別研修「行政能力強化」(2021年~2023年)

グアテマラでは2005年度から3年度にわたって実施された国別研修「グアテマラ地方公共政策」及び技プロ「PRODECA GL」の成果を受けて、国別研修「グアテマラ行政能力強化」(2021年7月~2024年3月)を実施している。これまで、多くの帰国研修員が研修終了後も15年以上にわたってネットワークを保ち、研修成果を取り入れながら地方行政及び地域開発のリーダー役を担っている。グアテマラでは4年ごとの政権交代のたびに政策決定者・担当者の大半が交替し、公共政策の持続性が担保されない地方では、とりわけ中長期的な取り組みが欠かせない。ガバナンス分野の協力成果は10年、15年という時間軸で評価を行う必要がある。

栄養・保健・貧困の改善といったグアテマラでの優先的開発課題の達成には、地域開発の拠点として諸案件の受け皿となるべき自治体を選び、能力強化研修を通して地方指導者グループを育成し、政権交代の影響を受けない中長期的な信頼・協力関係を打ち立てることが必要とされる。グアテマラを熟知した日本人専門家やグアテマラと日本双方の有識者グループが拠点地域において信頼のおける地方指導者を発掘し、戦後日本の開発経験をグアテマラの文脈に巧みにおきかえることのできる綿密な研修計画を設計し、研修成果の実践面までフォローアップを行うというアプローチこそが日本ならではの費用効果の高い協力手法であると考え、研修テーマを構築してきた。

本研修のもう一つの特色は本邦研修以上にグアテマラで実施する在外補完研修とその後の研修員の活動支援を重視していることである。更には、新型コロナ感染症のために本邦研修が不可能となったことから、2022年、2023年ではグアテマラにおいて現地補完研修を前倒しかつ重点的に実施する形で事業を継続した。これ以外に方法がなかったとも言える。グアテマラ・日本有識者の参加を得て、10市の市長・計画課長・女性課長40名を対象に、JICA優良案件の紹介や日本人講師陣による講義を実施した。優良案件紹介では、様々な分野の課題別研修員に講師になってもらい日本で学んだ知見と共にどのようにグアテマラでの業務に応用してきたかを共有した。日本人講師陣による講義では日本の地方自治制度や農村開発普及の制度と歴史、市民参加型で持続性のある振興計画の策定と実践等をテーマにグアテマラの文脈を考慮に入れた講義を実施した。

本国別研修の準備のために、2022年からJICA関係者のみならず、日本・グアテマラ有識者とともに研修目的の精緻化と講義内容に関するグアテマラ勉強会と受け皿自治体の調査を行い、研修の土台となるネットワーク構築を実施した。2023年3月にグアテマラ有識者5名を本邦に派遣し、グアテマラ行政官等にどのように学んでもらうべき等、議論を進めた。更に、グアテマラ有識者が日本の地方開発経験と地方行政の役割を学べたことで、この知見がJICAチェア、大学での講義、メディアでの論評などに活用され、日本とグアテマラの国際協力の中長期的な担い手となることも期待される。

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2021年度の現地補完研修の様子

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2022年度での現地補完研修の様子(本邦から来訪した講師陣によって実施)

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全ての研修では自市での課題は?どのようにアクションできるかなど分析・議論・発表した

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行政官、大統領府企画庁職員、日本メンバーとの集合写真