地域と企業に寄り添うコーディネーターとして

JICAと同じ独立行政法人で、北陸地区の中小企業の経営支援を行っている中小企業基盤整備機構 北陸本部の田中 学さんにインタビューしました。

独立行政法人中小企業基盤整備機構 北陸本部参事
田中 学さん

中小機構の海外展開支援とは??

昨年、「いしかわ海外展開サポート”かがやき”」が主催し、中小機構さんが実施されたセミナー【Webを活用した海外販路開拓のポイント:基礎編&実践編】の様子

独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下 中小機構)とは、経営者から経営の悩みや課題を聞き出し、共に解決策を考えサポートしていく機関です。近年日本国内市場の縮小や関係企業の海外進出に伴い、海外進出を考える企業が増えています。さらに日本政府が企業の海外進出を促進する流れの中、中小企業の海外進出に伴う課題や悩みの相談、事業プランの構築のサポートを始めたそうです。最近では事業の一環としてJICAのほか、ジェトロ金沢・日本政策金融公庫(金沢支店・小松支店)・石川県産業創出支援機構(ISICO)・石川県「国際ビジネスサポートデスク」・商工組合中央金庫 (金沢支店)とともに「いしかわ海外展開サポート”かがやき”」というネットワークを作りました。それぞれの機構の強みを生かし連携を強めています。

北陸の企業の海外進出の現状

北陸は他の地域と比べて製造業に携わる企業が多い地域です。関連企業の海外進出に伴って海外展開を考える企業も多いといいます。分野によっては国内市場の縮小の流れを受け、海外市場に目を向けなければならない企業も増えています。海外の競合他社に負けないよう、「自社の強みは何なのか」「進出を考えている国の情勢はどうなっているのか」をしっかりと見極めて準備する必要があります。また訪日外国人の増加に伴い、北陸地域を訪れる海外からの観光客も増加しました。このような北陸地域の企業を取り巻く環境の変化によって、地域内の顧客にしか事業を展開していなかった企業が、新しい客層を見出したり、商品の新たな魅力に気づかされたりすることも出てくると考えられます。海外からの新たな客層、日本にはない考え方・価値観が北陸の企業や北陸地域の活性化につながっていきます。世界や日本の情勢の変化の中で、北陸の企業が自発的に課題を見つけ、見つけた課題を解決するための計画や段取りを共に作り上げていくことが中小機構の役割になりつつあるといいます。

JICAと連携を強めることで…

「JICAが持つ国と国とのつながりや途上国の情報・資金面での支援は、中小機構にはない強みではないか。」と田中さん。昨年度までにJICAを含め様々な団体と連携を取り、横のつながりを持つことができました。今後は中小機構が持つ地域の企業との長く親密な関係を生かし、個々の企業のニーズ・強み・問題を聞き出す「北陸地域の産業のコーディネーター」としてそれぞれの企業に合った支援を行っていきたいと考えているそうです。今後はネットワークとしての関係に留まらず、JICAと共に事業を進め縦の深い繋がりを構築していければとの意気込みを伝えてくださいました。

インタビューを終えて

インタビューの様子

田中さんへのインタビューの中で印象的だったのは「地域や地域の企業に寄り添いたいという思い」です。北陸地域の企業が世界情勢や日本の情勢に対する敏感さや自発的に課題を見つけてそれを解決する力をもっていなければいけません。ただサポートするだけではなく、企業の経営力を高めるサポートに取り組むという観点はJICAが目指す技術支援の理念に通ずるものを感じました。企業が元気になることが地域の元気につながります。JICAが北陸地域の企業と関わりを深めたり民間連携事業を促進したりすることで北陸地域に世界からの新しい風を入れることができるのではないかと思いました。この風が北陸と世界をつなぎ、地域のさらなる活性化と北陸地域の国際協力への理解が深まることを期待したいです。

取材
JICA北陸インターン
石黒 歩