2月8日、ユカタン州メリダ市「野口英世博士研究所」内にて、バイオセーフティ3レベル実験室(以下、「BSL3ラボ」と称する。)の竣工式が開催されました。
国際協力機構(JICA)は、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延に対し、「感染症診断・治療体制の強化」、「感染症研究・早期警戒体制の強化」、「感染症予防の強化・健康危機対応の主流化」の3本柱からなるJICA世界保健医療イニシアティブを2020年7月に立ち上げました。
同イニシアティブの下、JICAは2021年7月より、メキシコ国ユカタン州メリダ市において技術協力案件「野口英世博士地域研究所感染症対策能力強化」を実施しています。
野口英世博士地域研究所(以下、「野口研」と称する。)は、ユカタン自治大学(前身は野口英世博士が黄熱病の研究を1919年に行ったオーラン病院)に属する感染症研究を行う施設です。我が国の協力によるBSL3ラボの整備を通じ、野口研の新型コロナウイルス感染症をはじめとする高危険度病原体の診断技術と研究能力向上を目的としています。
JICAの協力により、新設となるBSL3ラボの他、オートクレーブ、安全キャビネット、顕微鏡、インキュベーターなど17種類の実験用機材が野口研に整備されました。
JICAは、これまで保健省疫学局傘下の国立疫学診断・リファレンスセンター(INDRE)における野口研研究者・エンジニア向け研修の実施や調査団(長崎大病院感染症専門医)のメキシコ派遣を通じ、BSL3ラボのバイオセーフティ、バイオセキュリティ、運営・維持管理や医学研究活動に係る技術支援を行ってきました。
今後、BSL3ラボを有する野口研がメキシコ南東部において高危険度病原体の検査を可能とするラボネットワークを形成し、感染症サーベイランスの強化や近隣諸国も含めた新興・再興感染症や熱帯病の予防及び感染制御に貢献していくことが期待されます。
(注)バイオセーフティレベルとは、細菌・ウイルスなどの微生物・病原体等を取り扱う実験室の格付けのことでワクチンや治療法の有無、公衆衛生上の重要度に応じて1から4レベルに分類されている。
(注)感染症サーベイランスとは、感染症を探知する情報収集から、感染拡大を防ぐために早期の対策を講じる一連のサイクルを指す。