ジェリコ及びヨルダン渓谷における廃棄物管理能力向上プロジェクト

背景と目的

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適切に管理されない廃棄物は、道に捨てられたり、燃やされたりしている

パレスチナにおける多くの自治体では、検問所の存在による処分場へのアクセス制限や財政難などで、十分な廃棄物管理サービスを提供できていませんでした。この結果、廃棄物の野焼きや不適切な投棄が行われ、人々の健康や環境への負の影響が懸念されていました。

パレスチナの廃棄物管理は、小規模自治体が結集して組織する「広域行政計画・開発カウンシル(Joint Councils for Services, Planning and Development:JCspd)」が行っています。独力では行政サービス実施が困難な自治体が集まって、ごみ処理事業等を実施しているのですが、しっかりした協働体制の未整備、財源不足などからその機能は十分ではありませんでした。

このような背景から、ジェリコ及びヨルダン渓谷地域(JJRRV)に持続的で衛生的な廃棄物管理システムを導入し、他地域の自治体及びJCspdが行う廃棄物管理のモデルケースとなることを目的として本プロジェクトが開始されました。

事業概要

  • 協力期間:2005年9月〜2010年2月
  • プロジェクトサイト:ジェリコおよびヨルダン渓谷
  • 実施機関:パレスチナ地方自治庁、ジェリコ及びヨルダン渓谷地域における廃棄物管理広域行政カウンシル(JCspd JRRV)
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無償資金協力で供与した収集車で、収集・運搬の改善に取り組む

本プロジェクトでは、以下の活動を行いました。

ジェリコ・ヨルダン渓谷地域の廃棄物収集・運搬能力の強化、適正技術による衛生埋立処分、広域廃棄物管理組織の設立。また、この改善例をモデルケースとして、他の地域にも普及させることを目指しました。

1.廃棄物管理組織体制の確立

JCspd JRRV内での任務分担、会計システム、広報事業、地方自治体との協力体制、維持管理体制が確立されました。また、料金徴収の徹底化等の収入増強策が実施され、収支の黒字化が達成されました。(関連:地方行政制度改善プロジェクト

2.廃棄物管理の現状把握

ごみの質・量、収集・運搬、処分場、医療廃棄物の実態調査などが実施され、報告書にまとめられると共に、実態に即した廃棄物の新規収集計画が作成され、これに基づきわが国の無償資金協力を通した新規収集機材が導入されました。

3.廃棄物管理のアクションプラン策定・実行

調査をもとに、以下6つのポイントについてアクションプランを策定・実行しました。 (1)住民意識向上、 (2)収集・運搬改善、(3)処分場改善、(4)機材メンテナンス、(5)組織・制度整備、(6)会計制度

4.JJRRV事業の他の地域への普及

本プロジェクトを通して、パレスチナ地方自治庁が中心となり、各県に存在する廃棄物JCspdによる連合委員会(11 JCs committee)が設立されました。このようなプラットフォームを通して、他地域間の情報共有や連携事業等が促進され、JJRRV事業での成果が普及されることが期待されています。

事業ハイライト

廃棄物管理体制の整備

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ジェリコ処理場

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UNDP経由の無償資金協力による収集車

2005年に設立されたジェリコ・ヨルダン渓谷を担当する広域行政カウンシルは、廃棄物管理能力向上プロジェクトを通じて、廃棄物収集・処理サービスを同地域に初めて提供できるようになったと広域行政カウンシルのJabbar氏は語る。サービス開始当初はゴミに対する住民の意識は低く、また他の行政サービスよりも優先度も低かったため、収集しても料金を払ってもらえなかった。そこで、住民にサービス内容を納得してもらえるよう最初は無料にし、啓蒙とサービス提供の二本柱で取り組んだ結果、2011 年には料金徴収率が95%を達成した。Jabbar 氏は、サービスのさらなる浸透とリサイクル等新しい試みのため、今後も啓蒙活動に力を入れると語った。

また、対象地域の大半はイスラエルがコントロールするエリアCに位置する。隔離されがちなコミュニティに適切なサービスを着実に提供しつづけている。

リンク/参考資料