航空監視技術短期専門家による研修実施

2014年9月16日

9月9日より、航空監視技術短期専門として永野専門家が着任しました。当方のプロジェクトである、「補給管理センター及び航空路レーダー管制業務導入プロジェクト」と航空監視技術は、空の安全という観点から密接に結びつくものであり、将来的に次世代センサーの導入の可能性が高いネパール航空局の要望により、計画されたものです。来年度航空路レーダーが始めて供用される同国にとって、最新の航空監視技術とそれらの動向は関心の高いテーマとなっており、本研修においても永野専門家が実施する「航空監視技術に関する特別セミナー」を2日に渡って実施しました。航空監視技術、航法技術に関しては、ネパールの空の安全に寄与するよう、これからも折を見てセミナー等の形で発信していきたいと考えています。以下、永野専門家のメッセージを紹介致します。

航空監視技術短期専門家からのメッセージ(2014年9月16日)

永野 英徳

「補給管理センター及び航空路レーダー管制業務整備プロジェクト」の航空監視技術に係る短期専門家として2014年9月8日から9月14日まで派遣されました。

現在、ネパールではターミナル用としてトリブバン国際空港に17年前に設置されたレーダーが運用されておりますが、本プロジェクトによって、最新型機能を備えたターミナル用レーダー1基及び航空路用レーダー1基が設置され運用されることとなります。

1.業務内容

今回の派遣目的は、最新の航空監視技術の講義を実施することにより、空の安全に対する職員の意識・モチベーションの向上及び最新の知識の定着を図ることでした。具体的には2回のセミナーを実施しMODE-S、WAM及びADS-B等の最新の航空監視技術及び世界的な監視に係る動向の紹介を行いました。

特に、プロジェクトにより導入が行われる最新型レーダー(MSSR)の機能説明については、新たな測角技術やレーダーの複数局運用に係る質問が出るなど、当該技術に係る関心の高さが伺えました。また、次世代監視センサーとしてWAM、ADS-Bの紹介を行いましたが、これらセンサーはレーダーと比べて全てが優れている訳ではないため、近い将来、次世代監視設計を行う際に有益な情報となるよう、センサーの特徴、問題点及び導入事例について重点的に説明を行いました。

2.所感

管制機器が老朽化に伴う障害を起こしつつも、部分的な補修を行い綱渡りの様に管制運用を行っている現状を目の当たりにし、この度のプロジェクトにて導入されるMSSR等は、既設装置の信頼性低下に対処するのみではなく、ネパールにおける航空管制の安全性に大きく貢献されることを認識することができました。また、セミナーへの関心度の高さや、ネパール人の誠実で真面目な国民性にも触れることができ、新機材についても長期に渡り大切に有効活用されることを思い嬉しく感じました。

しかし、将来、装置導入後に必要となると思われる次世代高度監視については、ネパールとして空の監視のあり方が問われ、国の責任の下、その方針に則った新機材の導入を決定しなければなりません。この度のプロジェクト導入機材は、次世代高度監視に繋がるためのステップとなる様々な拡張機能が備わっていますので、これらの機能を駆使し慎重な決定をして頂きたいと感じています。
短期間の滞在ではありましたが、この度のセミナーがネパールにおける次世代監視構築の一助となれば幸いです。

最後になりますが、JICAの職員様をはじめ、長期専門家及びメーカーの皆様、そしてネパールでお会いした皆様に、このような貴重な経験をさせて頂きましたことを、この場をお借りいたしまして厚く御礼申し上げます。

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