国家試験問題の作成現場に潜入!
CPDプロジェクトの前身にあたる「ラオス持続可能な保健人材開発・質保証制度整備プロジェクト」(DQHPプロジェクト:2018-2023)では、継続教育制度の前提となる看護師国家試験制度の構築や看護師研修の実施を通じて保健医療人材の質の確保に資する免許制度導入を支援していました。そして、ラオス初の看護師国家試験の試験問題作成支援を2019年5月に始めて以来、保健省はプロジェクトの手を離れて看護師国家試験を毎年作成し、その数ヶ月後に国家試験を実施してきました。
今回プロジェクトメンバーは首都ビエンチャンから130km、高速道路を使って車を北へ走らせ約2時間。着いたのはカヤックや熱気球などのアウトドア・アクティビティで欧米観光客に人気の町ヴァンヴィエン。人口25,000人のこぢんまりとした町ですが、1990年代から観光地化が進み、バックパッカーを中心にラオスの主要観光地の一つになっています。
冒頭でも触れたラオス看護師国家試験の試験問題作成現場に潜入し、継続教育制度の土台となる免許制度の入り口となっている試験作成プロセスを確認することが、今回の出張目的です。
国家試験は、日本と同じように問題・解答とも外部へ漏洩してはいけないため、問題作成メンバーは首都ビエンチャンを離れるとともに、町の中心から少し離れた静かな郊外にある会議場を貸し切り缶詰状態の3日間で問題草案を作成しました。
通常、外部の開発パートナーはその場所に居合わせることはないのですが、これまでのJICA協力の流れから、CPDプロジェクトには招待状が届き、現場潜入するに至ったわけです。
会場には首都から保健省を中心に中央病院とラオス保健科学大学、看護学校を設置している全国9県から8県(ビエンチャン県、カムアン県、サワンナケート県、チャンパサック県、サラワン県、シェンクワン県、ルアンパバン県、ウドムサイ県)約60人が集結し、試験科目別にグループを分けて作業を続けていました。
写真1 チャンパサック県の参加者は医系カレッジで使用中の基礎看護ガイドを持参し議論の裏付けに活用している
写真2 成人・老年看護科目の問題作成グループ
写真3 科目別グループワークの結果を全体に共有するラオス保健科学大学メンバー(The University of Health Sciences)
写真4 草案完成間近になりメンバー全体を鼓舞するラオス保健科学大学のアヌソン博士(中央)
写真5 試験問題の構成について最終確認するセンマニ保健省人材局副局長(左から2人目)
途中、町全体で停電が起き、電気バックアップもない会場は暗闇に包まれましたが、PCの光だけを頼りに作業を続けました。普段、光がある場面でも中々議論が進まないことの方が多いラオス。真っ暗な中真剣な表情で作業を続け完成まで持っていく姿には心が揺さぶられました。今回は日帰り出張で約3時間の現場潜入でしたが、JICAの直接的な協力が終わった後も、技術支援なしでCPD制度の土台を毎年固め続けていることを確認できホッとしたとともに、保健省関係者とその素地を作った前プロジェクトの専門家に感謝の言葉を心の中でつぶやいていました。引き続きこれまでのJICA協力の成果を現プロジェクトに反映させるとともに、今後も続くであろう、その「つづき」も見据えながら協力していきます。
写真6 停電に気にかけることもなく最終議論を進めるメンバー達
写真7 メンバー間でお金を出し合いランチを調達。会場横のスペースで餅米に川魚、付け合わせを立食で楽しむメンバー
文責:田中博崇(業務調整)