チリ・国立サンティアゴ大学で北岡特別顧問によるJICAチェア特別講演の実施

2022年11月22日

2021年にチリ国立サンティアゴ大学との間で署名・締結されたJICAチェアの取り組みに係る協力覚書(MOC・5ヶ年計画)に基づき、同大学との共催により北岡特別顧問による特別講演がサンチャゴ大学にて11月22日に行われた。学生を中心に約100名が参加。

開会の挨拶で、パラヴィチニ副学長から、サンチャゴ大学では25年前に英語・日本語翻訳学科を設立して以来、日本と深い関係を保ち文化普及を積極的に行ってきたこと、大学の国際化の一環としてJICA及び同大学アドバンス研究所IDEAを中心に日本研究を推進していくことが期待されていることが述べられた。

渋谷和久大使の挨拶では、2018年には両国首脳が戦略的パートナーシップを宣言し、経済面のみならず、開発協力分野でも、太平洋を挟んだ隣国として、両国は欠かせないパートナーであり、お互いが持っている経験や知識を共有することは大変重要であると述べられた。

北岡特別顧問は「Recent developments of Japan's security and foreign policy」と題する特別講演を行った。日本の近代化および敗戦に至るまでの経緯を憲法制定の背景として振り返ったのち、日本国憲法と戦後の安全保障政策の原則および安倍政権下における安全保障・外交政策の改革について概説した。加えてチリにおける事業を含むJICA事業の重点的取り組みを紹介した。

質疑応答では、民主化を推進する上で、日米豪印戦略対話QUADやASEAN地域における日本の役割の重要性について問われ、北岡特別顧問からはQUADに加えて、東南アジアや韓国、台湾など基本的な価値観を共有できる国々との関係を深化させ一つの塊として国際社会での発言力を強化する必要があり、そのために「西太平洋連合」構想を提唱していることを紹介。チリについても同様の価値観を共有するパートナーであり、人権や環境などの課題解決に向けて取り組んでいけるだろうと説明。

また、ウクライナ出身で北岡特別顧問の東大時代の生徒だった方(チリに避難中)も出席し、ウクライナ情勢は国家の基本的な権利を侵害するものであるが、人権や自由など基本的な価値観は文化や社会的背景の違いを超えて共有できるものだとコメントすると共に、憲法第9条の解釈の変化は、日本の安全保障政策が受動的なものから能動的なものへ変化していくことを示しているのかを質問。

これに対して、北岡特別顧問からは、世界の安全保障バランスは軍事技術の進歩に応じて変化するものであり、日本の安全保障政策もより動的に変化していくべきであると同時に、日本は常に関係国との対話を重視し、首脳や有識者間など様々なレベルでの対話を積極的に進めていくべきであることを述べられた。

サンチャゴ大学での特別講演は、国際関係、経済や日本語を学んでいる学生が数多く出席し、若い世代に対して日本への理解を深める貴重な機会となった。

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左からロス教授、北岡特別顧問、パラヴィチニ副学長、渋谷大使、オルモス国際関係部長

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講演会の様子