JICAがエルサルバドル保健省の看護ユニットスタッフ能力強化を支援

2021年12月24日

中米カリブ地域/看護基礎・継続教育強化プロジェクトのフォローアップ事業の報告

「人間的な出産ケア、思春期の妊娠予防と看護過程の展開」をテーマにしたワークショップの最終回が、11月18日(木)と19日(金)の2日間、首都圏で働く看護師を対象に行われました。これは、過去に実施された「中米カリブ地域/看護基礎・継続教育強化プロジェクト」(通称「天使のプロジェクト」)のJICAフォローアップ事業として実施されたものです。

このワークショップは、東部地域、西部地域、中部地域、首都近郊地域そして首都圏のそれぞれ地域別の参加者を対象に5回に分けて実施されました。ワークショップは、保健省看護ユニットの管轄する国家リプロダクティブヘルス委員会のメンバーによって計画・実施され、それに参加したのは、学んだことを実践し現場レベルで共有することのできるファシリテーターの役割を担う合計120名の看護師です。また、本委員会における活動は、2010年に終了した天使のプロジェクトの成果の一つでもあり、この活動は現在もなお継続されています。

最終回の開会式には、JICAエルサルバドル事務所の小園勝所長と保健省看護ユニットのルディス・マベル・ソト・デ・セペダユニット長が出席し、いずれも看護の専門知識の実践に向けた支援を表明しました。さらに、天使のプロジェクトの専門家であった鳥取看護大学助教授の藤原美智子氏が講演し、その中で日本の母子をとりまく現状と妊娠、分娩、産褥期における母子継続ケアを説明しました。参加者は真剣に聞き入り、その後は積極的な意見交換も交わされ日本の母子継続ケアやその仕組みについても理解を深めていました。

そして、藤原元専門家はプロジェクト対象であった西部地域(サンタ・アナ県、ソンソナテ県)の1次医療機関である保健施設を訪問し、コミュニティにおける妊娠期のケアの質についてモニタリングを行いました。そこでは、天使のプロジェクトの学びが生かされており、活動の持続性が改めて確認されました。

エルサルバドル保健省の統計発表によると若年妊娠は、2011年には31.5%であったのが(2014年エルサルバドル保健省)2019年には24.5%まで減少しています(2020年エルサルバドル保健省)。また、2018年の妊産婦死亡率は出生10万人あたり28.6人であり32例が報告されています(2019年エルサルバドル保健省)。保健省による調査の結果そのうち6割は予防可能な原因であったと結論付けられているため、それを達成するためには今後さらなる専門性の能力強化が求められています。

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藤原元専門家のモニタリングの様子。妊産婦の健診記録の一覧をチェックしています。

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藤原元専門家が、西部地域の保健施設を訪問しモニタリングしている様子。そこでは、2010年に終了したプロジェクトで作成された指導教材が今でも大切に使われています。

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ワークショップの様子。看護ケアの提供は医療的なケアだけではなく、優しさや思いやり気遣いなどがなぜ重要かということを参加者各自が考えて意見を交換しながら学んでいます。