第7回サステナブル・ブランド国際会議2023にて、サステナブル・チョコレートにかかるセッションに登壇しました

2023年2月15日

概要

  • 会議名:第7回サステナブル・ブランド国際会議2023 「サステナブル・チョコレート-児童労働のないカカオ調達への挑戦-」
  • 日時:2023年2月15日(水)12:25~13:10
  • 会場:東京国際フォーラム
  • 主催:株式会社博展 Sustainable Life Media, Inc.(本社:米国)

登壇者(敬称略)

ファシリテーター

小野 美和 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 Smart X Lab / Social Impact Office アソシエイト スペシャリスト リード

パネリスト

  • 河合 辰信 有楽製菓株式会社 代表取締役社長
  • 白木 朋子 認定NPO法人ACE 副代表/共同創業者
  • 寺門 雅代 独立行政法人国際協力機構 ガバナンス・平和構築部 企画役

背景・目的

「子どもたちを笑顔にするチョコレートが作られる陰で、別の子ども達が過酷な労働にさらされている。」西アフリカのカカオ産業における児童労働問題は特に深刻であり、日本に輸入されるカカオ豆の約80%が由来するガーナでは、およそ5人に1人の子どもが児童労働に従事しているといわれています。

この問題の解決には多様なステークホルダーの協働が不可欠です。日本においては2020年、持続可能なカカオ産業の実現を目標に、ステークホルダーが課題解決に向けて協働することを目指して、JICA(国際協力機構)により「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」(以下「プラットフォーム」と記載)が設立されました。

本セッションは、あらゆる立場の人がサステナビリティやブランド、イノベーション/R&Dなどに関し学びとネットワーキングを深めるためのコミュニティ「第7回サステナブル・ブランド国際会議2023」の1セッションとして実施されました。上記プラットフォームを運営するJICA、児童労働分科会事務局としてプラットフォームに参画しているNPO法人ACE(以下「ACE」)とデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下「デロイト」)、そしてプラットフォームメンバーである有楽製菓株式会社(以下「有楽製菓」)が登壇し、児童労働のないカカオ調達に向けた取り組みにつきそれぞれの立場から紹介しました。

内容

  • ACEよりカカオ産業における児童労働問題についてご説明。コートジボワールとガーナのカカオ生産で156万人の児童労働者がおり、95%が危険有害労働に従事している現実に言及しました。
  • 有楽製菓からは、ブラックサンダーのカカオ原料のサステイナブル化、またその業界への影響についてご紹介。取り組みの始まりは、子どもたちを笑顔にしたいと同社が製造しているチョコレートの陰で、児童労働問題があることを知ったこと。ACEからの協力を得て現地の農園を見学したうえで、様々な努力を重ね、カカオ原料の取引先を変更し、2022年9月にはブラックサンダーのカカオ原料について児童労働に配慮したものに全面切り替え。結果として、元取引先のサステイナブル豆の取扱い方針の転換にも影響を与えることが出来たという、他のアクターにも波及したグッドプラクティスについてご紹介いただきました。
  • 続いて、ACEより、児童労働の原因の一つとして、ガーナのカカオ農家の生活に必要な所得と、実際の所得との間に大きなギャップが存在する点について説明。生活に必要な最低ラインの所得水準は1人あたり$2.08/日、実際の所得水準は1人あたり$1.42/日で、1人あたり$0.66/日のギャップ、1家族(5人)の場合には1年で約$1,200(約16万円)のギャップが生じている現実を指摘しました。
  • デロイトからは、「チョコレートの本当の価格(True Cost)」について紹介。カカオ産業においては児童労働、森林破壊、農家の貧困など多くの問題が絡み合っており、サプライチェーンをとおして発生する外部コスト(社会的、環境的に発生している影響を補償、補修、予防するために必要なコスト)は、板チョコレート1枚(50g)あたり約33円であるといわれており、チョコレートの市場価格にこの外部コストを合計したものが、本当の価格(True Cost)となることを強調しました。
  • JICAからは、プラットフォームの意義について改めて強調。昨年、児童労働撤廃分科会(注)の活動の結果、セクター別アクションを策定するなど、メンバー間の協働の促進に努力していると説明。
  • セッションの最後には、登壇者らより、今後の方向性について以下のメッセージを発信しました。
    • 「児童労働問題は、安いものを求める消費者意識に起因する価格抑制とコスト削減、労働者の低賃金・低収入による家庭の貧困にはじまり、多数の要因が複雑に絡み合い、いわば悪循環を生み出すシステムのようになっている。そして、根底に『児童労働はなくせない』というメンタルモデルが大きくたちはだかっているが、今一度私たち全員がそのシステムのどこかに組み込まれているとの自覚を持ち行動を起こすことが肝要」
    • 「このシステムが支える一連の課題は、途上国の教育問題といった伝統的な開発課題よりも更に多くのステークホルダー・システムからなっており非常に複雑。これをサステイナブルな方向に変革するには小さな行動の連鎖が不可欠。ACEと有楽製菓が出会い対話を通じて変革への行動につながったような、化学反応を起こし、小さな取り組みの点を線に線を面にできるよう、フランクな対話と多様なステークホルダーの協働促進のため、プラットフォームも役割を強化したい」

(注)児童労働撤廃分科会:プラットフォームでは、会員の発意により特定のテーマを扱う分科会を設置しています。児童労働撤廃分科会はJICAとACEが発起人となり2021年12月に設置。児童労働リスクの特定・予防・軽減のためのガイドラインである「児童労働の撤廃に向けたセクター別アクション」を策定するなど、マルチステークホルダーの協働を促進しています。

【画像】

パネルディスカッションの様子(画面左からJICA寺門氏、ACE白木氏、有楽製菓河合氏、デロイト小野氏)

参考情報

サステナブル・ブランド国際会議について

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

有楽製菓株式会社

認定NPO法人ACE