長期研修員向け地域理解プログラム「沖縄の歴史・文化のソフトパワー」を実施しました。

2021年6月2日

JICA沖縄では、これまで研修員福利厚生の一環として、平和学習ツアー(平和祈念資料館)や文化紹介・体験プログラムを実施してきました。今回、長期研修員(留学生)を対象に、初めて「地域理解プログラム」を企画し、5月16日に実施しました。沖縄の特異な歴史、文化の理解が深まる内容とし、琉球大学で学ぶ5ヵ国5人が参加しました。

講義:沖縄の歴史・文化のソフトパワー

上里氏の講義を動画教材(英語)で視聴

「そもそもソフトパワーとは何ですか?」から活発に行われた質疑応答

 
琉球史の研究者である上里隆史氏を講師に招き、同氏による講義で制作した動画教材も活用して講義を実施した。
 
小さな島国であった琉球が、琉球王国時代、東・東南アジアとの交易により栄え、明治維新期に沖縄県となり、戦後米軍統治下には琉球(政府)に、そして1972年に本土復帰し現在の沖縄に至るという大きな変化をたどった歴史と、その中で生まれ育まれた特異な文化、変動の時代にあっても存在し続けた琉球・沖縄のソフトパワーを、動画教材視聴と講師との質疑応答で学んだ。

視察:世界遺産「首里城」

世界遺産「園比屋武御嶽石門」。この後ろに聖域が広がる

2019年に焼失した首里城正殿跡にて。在りし日の首里城や、かつての琉球大学旧首里キャンパスをイメージしながら首里城の構造、役割を学ぶ留学生たち

守礼門にて。上里氏と参加留学生5人

 
梅雨入り後で天候が心配されたが、快晴のもと、上里氏にガイドいただける貴重な機会を持つことができた。
 
首里城は琉球王国時代、王族が居住する王宮であると同時に、王国の政治・外交・文化の中心であった。1945年の沖縄戦で焼失し、焼け跡は一時琉球大学のキャンパスとなったが、1992年に沖縄の本土復帰20周年を記念して復元され、独特な建築様式や石組み技術に高い文化的・歴史的価値が認められ2000年に世界遺産として登録された。アジアや日本の建築物が一般的に南向きであるのに対し、首里城正殿は西向きに建てられているのも特徴のひとつである。
 
正殿に向かって右側にある南殿と番所と、左側にある北殿は建築様式が異なる。南殿と番所は木の色を活かした白木造りで、北殿は正殿と同じく漆塗りの赤い建物である。中国との冊封・進貢関係を維持しつつ、薩摩藩に支配されるという二重支配下にあった時代に、日本式の儀式や接待を行うため日本式の建築をも取り入れた沖縄の「ソフトパワー」のひとつがここでも見られる。

振り返り

講師へ感謝を述べる参加者代表ヤハヤさん(ニジェール)

 
プログラムに参加した研修員からは、「沖縄の文化の特殊性と、それが時間(治世)とともに変化してきたことを学べた。ソフトパワーを強め、地域の魅力をアピールし人々を惹きつけることで、地域(国)力を向上させることは、自国でも活かせると考える」、「ソフトパワーが何であるかを理解し、沖縄のソフトパワーの豊かさに感銘を受けた」、「専門家から直接説明を聞くことができ、理解が深まった。沖縄の歴史・文化をもっと知りたいと思う」など感想が寄せられました。講師からは「それぞれの国に帰国後、ソフトパワーを活かして国の発展に貢献されることを願う」と励ましをいただき、プログラムを終了しました。


今後もJICA沖縄は、研修員の日本・沖縄の理解促進のためのプログラムを実施していきます。