
予防概念が未定着の地で
保健所職員の活動支援。
- 佐谷 孝行さん一般
- ホンジュラス/グラシアス市保健所
- 職 種感染症・エイズ対策
- 派遣期間2018年1月~2020年1月
グラシアス市保健所で活動しはじめ、1年7ヶ月。
イギリスの大学院で培った教育と保健に関する知識を生かし
医者に頼らない市民の環境づくりに励む。
予防の概念を定着させたいグラシアス市。私が配属先から依頼されたのは保健推進員(保健所勤務の公務員)と、そのアシストを行う保健ボランティア(民間人)と協力して市民に対する予防啓発活動を行い、保健推進員らスタッフの活動の質を向上させることでした。
保健推進員はベテランから新人まで約30名。この人数でグラシアス市内にある10カ所のコミュニティを訪れ、活動を行っていました。
予防啓発活動以外に、各コミュニティに暮らす住民の家庭調査(妊婦の数、高齢者の疾患率等)も行っているため業務量が多く、スキルアップも容易ではない状況でした。
知識や教え方にも個人差が生じていて、担当者によって活動に差が出ないようにしなければならないなと感じました。
上手に説明できる人、そうでない人。ベテランもいれば新人もいる。同じ保健推進員でも予防啓発に関して持っている知識にも差があり、活動レベルに差が生じており、現場で課題になっていました。さらに、他の業務に忙殺されて予防啓発活動が計画的に行われていない現実もあり、みんなが一定のレベルで効率よく活動できるようにするための工夫が必要だと思いました。
また、思春期の若者を対象にした若年妊娠や病気予防など保健・性教育コンテンツが不十分で、教える内容の偏りも感じました。
持ち運びしやすく、現場の啓発活動で使いやすい。みんなが共通して使える。同じ内容を講義できる。全てを網羅している活動用ツールがあれば解決できると思いました。
市内は電力供給が不安定で、パソコンを使えない人も多いため紙のツールを考えました。幸い、歴代の隊員達が作ってきた学校保健テキストがあったので、それらを編集し直し全92ページの1冊(大きさはA4サイズ位)にまとめました。手洗い・うがいといった根本的な衛生管理方法から、虫媒介感染症予防、妊娠、性感染症予防など14のテーマ別です。
持ち運びできますしテーマ別編集のおかげで保健推進員からは「こういった物が欲しかったんだ」と喜ばれています。150部印刷したのですが好評なので増刷も検討中です。
保健推進員や保健ボランティア自体の知識向上、啓発活動におけるスキルアップにもつながっている点がうれしいですね。
元々私はイギリスの大学院(教育開発学部)にいました。そこで公衆衛生やアフリカのエイズ問題、保健と教育に関しての研究をしていたのです。その後は、アフリカのエイズ孤児を支援している日本のNGOでインターンをしていました。
自分の居場所が変わっても私の興味は変わらず「教育と保健」です。
帰国後は、コンサルタントという立場で、再び実際の途上国地域で、現場の人たちと関わることができる活動をするのも良いなと思っています。とはいうものの当面の具体的な動きとしては、外務省のJPO(Junior Professional Officer)派遣制度に挑戦したいと考えたりもしています。