局長からの挨拶

局長からの挨拶

12月1日付で青年海外協力隊事務局に着任いたしました。私自身も青年海外協力隊員として1997年4月からインドネシアのスラウェシ島で2年間活動した経験がありますが、それからはや23年が経過しました。この間、国際協力やJICA海外協力隊事業を取り巻く環境は大きく変わっています。

特に近年は新型コロナ感染症が未だ収束しない中、ロシアによるウクライナ侵攻により国際秩序の不安定さが増すとともに、世界経済にも大きな打撃を与えています。気候変動に起因するとみられる自然災害も世界各地で増加しています。このような現在進行中の複合的危機は、開発途上国の経済社会、とりわけ、貧困層など最も脆弱な人々に多くの影響を与えています。そのような中では、途上国の人々が自らの課題に対峙する、一人一人の力を高めていく事がこれまで以上に重要となっています。こうした時代であるからこそ、JICA海外協力隊が求められ、活躍できる現場が増えていると感じています。

JICAボランティア事業は、1965年の創設以降、一貫して、派遣された隊員の方々が現地の方と同じ目線で、共に生活し、共に考え、共に課題解決に取り組む草の根のアプローチを実践してきました。この理念は、国内外の状況が変化していく中でも守っていくべきものと考えています。コロナ禍で2020年3月から4月にかけて世界中に派遣中の全隊員が一斉帰国する事態に見舞われましたが、その後、安全が確保できる国・地域から順次再派遣を進めています。隊員の皆様の健康と安全を第一に考えながら、海外から寄せられる多くの支援要請に応えられるよう派遣を進め、開発途上国に「Japan is back」というメッセージを届けていきたいと思います。

JICAは引き続き「信頼で世界をつなぐ」というビジョンの下に、ウィズコロナ/ポストコロナの協力を進めていますが、それは現場での活動の積み重ね、人と人そして国と国との「つながり」を深めていくことではじめて実現できるものです。途上国の人々とともに現場の目線で課題解決をしていく協力隊員の活動は、まさに信頼で世界を結ぶということの基礎(土台)になっています。また、そうして途上国で様々な経験をした協力隊員が、日本国内においても地方創生や多文化共生社会の実現に向けて活躍しています。帰国後の隊員の活躍支援にも引き続き取り組み、日本も元気にするJICA海外協力隊を目指していきたいと思います。

JICA海外協力隊は多くの国内の関係者の皆様に支えられている事業です。皆様と連携し、途上国への貢献を志す国民の方々の熱い思いを実現できるよう今後も事業を推進してまいりますので、本事業へのご参加とご協力をお願いいたします。

独立行政法人国際協力機構(JICA)
青年海外協力隊事務局長
橘 秀治

知られざるストーリー