知識と技術を底上げし、
母と子の命を守る。
- 下野 理紗さん一般
- パプアニューギニア/
ケビエン ニューアイルランド州 州立病院 - 職 種助産師
- 派遣期間2018年7月~2018年12月
2度目の協力隊。医師や助産師が少ないエリアの州立病院で、
助産師として啓発活動を展開すること6ヵ月。
コミュニティヘルスワーカーと知識・技術向上に励む。
産科医を含め医師自体が少ないパプアニューギニアでは助産師や「コミュニティヘルスワーカー」と呼ばれる、日本でいうと准看護師のような人たちが妊娠・出産・産後ケアなどを担当しています。そのような人たちが医師や助産師代わりの役割を果たさなければならないため、お産の知識や技術の点で多くの課題を抱えています。安心安全な出産のため、母子の健康と命を守るため現地のお産のキーパーソンであるコミュニティヘルスワーカーの知識と技術をもっと向上させるというのが、私のミッションです。
病院で活動していくうち、知識が不足しているのはコミュニティヘルスワーカーだけではないこと、安心安全な出産を増やし、母子の健康と命を守るためにはコミュニティヘルスワーカーに働きかけるだけでは不十分なのだと気づきました。
受診するタイミングが遅いなど、妊産婦自身も、妊娠・出産に対する知識が不足していたのです。
さらにパプアニューギニアは日本と比較すると父親の育児参加の機会が非常に少ない国で、父親に対しても課題を感じました。日本と違い、妊婦の健診に父親が一緒に来ることもないですし、夫の立ち会い出産もありません。赤ちゃんを迎えるお母さんとお父さんが一緒に指導を受ける両親学級という文化もありませんでした。
正しい知識を分かりやすく伝えるために、現地スタッフとともにココナッツの殻や葉などで胎児と胎盤の模型を手作りし、母親学級を行いました。
父親に対しては日本ではおなじみの妊婦体験ジャケットを手作りしました。エプロンに大きなポケットを作り、その中に石ころなどをたくさん入れたのです。実体験することで妊婦の大変さを理解し始め、身重の奥さんを積極的にサポートする父親も現れました。
このような教材を使って参加型の活動を行った結果、「妊婦健診には旦那さんも連れてきてね!」と父親の参加を促す人、これまで一方的だった妊婦への指導を改め、会話方式で始める人など、コミュニティヘルスワーカー側にもうれしい変化が生まれてきました。
日本では妊婦さんのバイタルサイン・体の症状を見るのが医療行為として一般的ですが、これまで協力隊として活動した経験から、医療行為だけでは母子の命を救うことはできないことに気が付きました。海外のお産事情には、離島のため医療機関へのアクセスが悪い、そもそも移動のための交通費が捻出できないなど、地理的事情・交通事情・金銭事情など多数の要因が複雑に関係していたからです。もっと、さまざまな国のお産の在り方、お産のスタイルを知りたいと思うようになりました。
今後も海外で経験を積むなどして、医療視点だけではなく、さらに広い視野で妊婦さんを見守り、助けることができる助産師を目指して、さらなるスキルアップを図っていきたいと思っています。