「スペシャル オリンピックス」とは、知的障害のある人々にさまざまなスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を、年間を通じ提供している国際的なスポーツ組織。私はここでスポーツを通じ集まった障害を持った人やその家族や支援者に対して、社会参加と自立支援を目的とし、能力や状態に応じた運動指導、どんな障害の人でもチャレンジできる環境のサポート、より健康的な生活を送るための衛生・食事指導などを実施しています。そして私が帰国した後も機能するよう本人と家族、支援者と医療従事者やボランティア団体の間に立ち、多職種連携をつくることを意識し活動を行っています。
サモアの国立病院で足が不自由な子に車いすを提供したものの、その後のフォローがなく、その子が車いすを一度も使わずにハイハイで移動しているケースに遭遇したことがありました。医療・福祉系の組織間では交流も情報共有も行われておらず、取りこぼし、やりっぱなしの支援が目立ちました。そこで、本人と家族を支援するために多職種連携の必要性を感じました。
また、歯科健診をしたところ虫歯がある人が多く、これではスポーツはもちろん、健康面でも問題です。無料治療を促しましたが、本人が怖いのか、子どもが暴れることを親が恐れたのか、誰一人病院には来ませんでした。この問題に対しては予防に注力するほうが効果的だと感じ、歯科衛生をきっかけに、連携づくりができないかと考えました。
私が行っている支援学校での昼食後の歯磨きとフッ素洗口を起点に、歯科衛生からの健康づくりを目指し、歯科医師中心の多職種連携をつくりました。さまざまな幅広い分野の視点が増えることで、より質の高いケアを提供することができます。
連携間の仲介のため、各組織のキーパーソンを探し直接会いに行ったり、SNS上でメッセージ交換するなどして、その人と仲良くなることに時間を使いました。いずれ私は2年間の活動後に帰国してしまいます。自分がいないと動かない関係ではなく、現地の組織をつなぎ現地の人にやってもらうネットワークを構築するほうが良いと考えています。少しずつですが、私を介さず各々の組織間での連携事例も増えてきました。
サモアで学び、感じていることの一つが、ネットワークの大切さです。人と人とを結んで課題を解決していく、このサモアでの活動は、自分の人生において今後につながる経験やスキルになると思っています。
帰国後は生まれ育ったふるさとの石川県でもこの力を発揮し、地元が抱えている人口減少や少子化問題に取り組みたいと考えています。そこではきっと、協力隊で経験した、村で困っている人を見つけることや、協力してくれる人や組織を見つけてつなぐということが、生かせるのではないかと思います。
まずは長く離れていた地元に戻り、病院か施設で働きながら地元を知るところから始めようと思います。また大学が主催する地域活性化プロジェクトへの参加も考えています。