
農家を巡回し、
畜産・家畜の技術指導。
- 浮田 真琴さん一般
- セネガル/リンゲール 畜産局
- 職 種家畜飼育
- 派遣期間2017年7月~2019年7月
乾季が長く、農業だけで暮らすのは大変な地域。
畜産局に赴任し、畜産農家を巡回指導すること1年10ヶ月。
根気強く農家と行動を共にし、畜産業の安定的発展に励む。
私が配属されたのは畜産局です。畜産局の局員は食肉検査や事務作業で局を離れることができないため、私が求められたのは畜産農家の巡回指導でした。近い所は徒歩圏内、遠い所だと40キロ先まで様々な村を回り、家畜飼育に対する技術指導や、生産物の品質管理、養鶏の普及と養鶏による村の収入向上を託されていました。
村を回り、畜産農家のみなさんにヒアリングしてみると、家畜用の飼料不足で悩んでいました。セネガルでは1年のうち雨季は3か月しかなく、残りはずっと乾季。そのため植物が育ちにくく、牧草(家畜用飼料)が手に入りにくかったのです。
雨が降らない時期が長いので、牧草を育てるためには自発的かつ継続的な水やりが必要です。しかし、その作業の大変さから水やりを怠り、草を枯らしてしまい、途中で飼料づくりを諦めてしまう農家、飼っている家畜に草を食べられてしまい途中で諦めてしまう農家などがいました。
牧草への水やりは野菜畑と違って広範囲ですが、じょうろやホースで水を撒かなければなりません。中にはバケツで水を運んできて手で水を撒くというスタイルの農家もいます。また、水代も安くありません。そのため、畜産には飼料が欠かせないこと、水やりの大切さはわかっていても、自ら飼料用の草を育てようとするモチベーションを維持するのが難しい状況でした。
ただ巡回するのではなく水やりを手伝うなど農家たちと行動を共にすることで信頼を得た私はネピアグラス(主に家畜飼料として用いられるアフリカ原産の牧草)の栽培を提案しました。育てやすい上、飼料になるだけではなく売ることもできると考えたのです。
まず村に一つモデルとなる畑をつくり栽培方法の指導を行いました。実際の生育・成果を実感してもらうことで、農家たちのモチベーションも上がってきて、飼料作りを積極的に行うようになってきました。
まだ飼料を販売して収入を得る段階には達していませんが、ヨーグルト等と物々交換ができるまでに仕組みが育ってきました。将来、市場で飼料として販売できる下地作りはできたと思っています。
農家と行動を共にしていて、彼らのモチベーション以外にも課題を見つけました。それは知識不足です。セネガルの畜産農家には家畜の感染症に対する知識も不足していて、「予防する(未然に防ぐ)」という考えが浸透していませんでした。
そこで私はニーム(除虫効果のある植物)の葉を煮詰めて液体をつくり、それを鶏舎などに散布し、感染症を予防する大切さを教える活動も行っていました。
途上国での家畜感染症、人獣共通感染症は大きな課題です。私は帰国したら日本の大学院でそれら家畜感染症、人獣共通感染症を制御するための疫学を学びたいと思っています。その後は途上国に戻り、学んだ知識を生かして人々の生活水準を上げることに貢献したいと考えています。