前職の理事長室配属中、海外出張先や国内で途上国政府の国家元首をはじめ様々な要人の方々と理事長の面談に同席する機会がたくさんありました。その際に必ずと言って良いほど「JICA海外協力隊員を我が国に派遣してくれてありがとう!」という心のこもった力強い感謝の意を伝えていただけます。実感のこもった本気の言葉を聞き、胸が熱くなりました。要人に限らず、途上国を旅行すると入国管理官さんから、スーパーの店員さんから、もしくは町のタクシードライバーさんから、日本人だと気づかれると「実は自分の学校の先生が日本の海外協力隊員だった。本当にありがとう!日本は大好きだ!」などと楽しそうに様々な海外協力隊員とのエピソードを伝えてもらうことも多いです。
1965年に、ラオス・カンボジア・マレーシア・フィリピン・ケニアの5か国に29名を派遣したところから始まったJICA海外協力隊は、2025年に60周年を迎え、のべ99か国に57000人以上の隊員を派遣してきました。多くの日本人が知らないような世界各国の途上国と日本を、人と人との心のこもった人間関係と信頼で繋いでいるのがJICA海外協力隊です。
また、国内では特に地方において、少子高齢化や人口減少の課題が深刻化し、これまで以上に地方創生の必要性が謳われています。日本を訪問し、滞在する外国人材が増えていますが、日本を活力ある国として維持するためにも、そして、これからも日本が外国人材に選ばれ続ける国であるためにも、地方創生を推進すると共に、外国人材にも寄り添って日本と海外をつなぐことができる人材が求められています。そのような人材として、誰も知りあいがいない途上国のコミュニティで、よそ者として2年間、自ら考え、自ら行動に移して、そして現地の人々と共に様々な活動を行ってきた経験を有している海外協力隊経験者以上の適任者は思いつきません。
最近では、社会起業家になりたいという海外協力隊経験者も増えています。世界初の3Dプリント義足の製造を事業化し、低価格、高品質、短納期を実現した元フィリピン隊員。モバイルマネーを活用したアフリカの井戸の維持管理システムを開発・普及している元ウガンダ隊員。国内で外国人が抱える様々な問題や悩みを解決する団体をたちあげた元ルーマニア隊員。世界を変え、世界と日本をつなぎ、そして日本も変えていくJICA海外協力隊。そのような想いでJICA海外協力隊60周年記念事業のテーマとして「世界と日本を変える力」を掲げました。
これまで以上に国内外で求められているJICA海外協力隊。ある隊員が「もしあなたが興味を持ったのなら、海外協力隊に挑戦する資格がある」と言っていました。自分が参加しても何もできることがないんじゃないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。是非一度海外協力隊のホームページをご覧ください。あなたができることがきっと見つかると思います。「人生なんてきっかけ一つ」、海外協力隊のキャッチコピーですが、本当にきっかけ一つで人生は変わります。あなたのご参加を心よりお待ちしています。
独立行政法人国際協力機構(JICA)
青年海外協力隊事務局長
大塚 卓哉