活動Q&A集〜ボランティア技術顧問が回答〜

JICAボランティアへの技術支援を目的に、分野ごとに配置されているボランティア技術顧問。派遣中ボランティアから寄せられた活動に関する相談と、それに対する技術顧問による回答の例をご紹介します。

Question 1:「モリンガ」を活用した栄養改善活動の優良事例は?

病院配属の看護師隊員より

 栄養失調症の乳幼児やその母親、その他の住民の栄養改善を目的に、以下のようなモリンガの普及活動を行っています。
■配属先病院の敷地でモリンガを栽培し、採れたモリンガを病院食に混ぜ込んだり、入院中の乳幼児の母親で栄養失調症の方に食べていただいたりする。
■地方の村やヘルスポストなどでモリンガの植樹を行う。
 そこで、これまで隊員がどのような方法でモリンガの普及活動を行ってきたのか、それによりどのようなインパクトを与えることができたのかを教えていただきたいです。

Answer

モリンガはアジアやアフリカなどの熱帯地域・亜熱帯地域に群生する植物で、カリウムやカルシウム、ビタミン(A、B1、B2、B3、E)、アミノ酸が豊富に含まれていることが知られています。また、医学的にも抗炎症作用や抗菌作用、抗糖尿病作用、抗ガン作用などを持つことが報告されています。そのため、モリンガを用いた栄養改善活動を展開しようとする企画は適切であると考えます。そうした活動の一例として、アフリカの農村に派遣されたエイズ対策隊員が、任地が同じ栄養士隊員と協力して行った、住民のHIV感染予防を目的とした栄養改善活動についてご紹介します。
 2人が行ったのは、5日間にわたるモリンガに関するワークショップでした。同ワークショップでは、「肥料のつくり方」「殺虫剤のつくり方」など栽培方法に関する話、栄養に関する話、調理方法に関する話や実際の調理・試食、コミュニティ菜園や家庭菜園の活性化などが行われました。
 住民には大変評判が良く、加えてHIV感染の予防啓発も十分行うことができたとのことでした。職種が異なる隊員たちのコラボレーションが実効的であった例でもあります。

! モリンガは、子宮収縮や流産の可能性が指摘されており、妊婦の摂取は危険なのでやめましょう。

【回答者】

神谷 茂さん
●青年海外協力隊技術顧問(担当分野:医療)
●杏林大学保健学部長

Question 2:新生児発育指標の早見表を作成する際の留意点は?

産科病院で活動した理学療法士隊員より

 活動先の産科病院では早産児や低出生体重児が多いです。しかし、退院後の発育は地域のクリニックが担当することになっているため、配属先の医療従事者は、新生児が退院後にどのような発育をたどるのかを、お母さんに詳しく伝えません。そこで私は、出生後1カ月から1歳までの発育の指標(3〜4カ月=首がすわる、5〜6カ月=寝返りをする、など)をまとめた早見表を作成し、配属先の新生児集中治療室に掲示することで、入院中からお母さんたちに退院後の発育について知っていただきたいと考えています。こうした早見表の作成にあたり、技術的に留意すべき事項について教えていただきたいです。

Answer

 新生児の発育指標の早見表の作成にあたって留意していただきたい点は以下のとおりです。
(1)標準の発育指標で作成するだけですと、早産児や低出生体重児の両親が、たとえば「出生後3〜4カ月経つのに首が座らない」などと驚いてしまいますし、「あれもこれもほかの児より遅れている」と考え、悩むことになります。それがときに虐待につながりかねませんので、十分な注意が必要です。早産児や低出生体重児は、正常に出生した児に比べて発育にはるかに時間がかかりますので、その説明をまず行い、単純に比較しないよう指導してください。
(2)標準の発育指標をどのように補正して考えるかですが、一口に早産児・低出生体重児と言いましても、出生時の週数やその他の要因により発達の予後やスピードは変わってくるので、一般的には、修正週数で標準の発育指標を目安としながら、個別の評価をします。例えば、出生から数えれば月齢7カ月だが、修正月齢は4〜5カ月という早産児であれば、正期産児の4〜5カ月相当の発育をしているかを見るということです。
 日本では、ハイリスク児フォローアップ研究会のフォローアップ健診プロトコールというものがあり、極低出生体重児(出生体重1500グラム未満)については、1歳6カ月児健診までは修正月齢で見て、3歳児健診からは暦年齢で見ることになっています。詳細は同研究会の以下のウェブサイトをご覧ください。
http://highrisk-followup.jp/schedule/

【回答者】

森 淑江さん
●青年海外協力隊技術顧問(担当分野:看護)
●群馬大学教授


「ボランティア技術顧問」制度

JICA青年海外協力隊事務局では、ボランティアに対する技術支援を行う「ボランティア技術顧問」を、ボランティアの職種の分野ごとに配置しています。

ボランティア技術顧問による技術支援の制度

ボランティア技術顧問は、派遣中のボランティアが活動上の技術的な支援を希望する場合、必要に応じて助言を行っています。

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