“失敗”から学ぶ

マンパワーにならないようにとCPと距離を置いて活動し、後悔

文=片山美弥さん(キルギス・青少年活動・2015年度3次隊)

配属先である養護施設では孤児や家庭の事情で親と離れている子どもたちが暮らしており、彼らの情操教育のために、片山さんは、サマーキャンプでのスポーツ・物づくりや、広島平和学習セミナーなどを実施した。写真は、広島の小学生から届いた手紙の前での1枚

 私は、初代の隊員として配属先であるキルギスの養護施設に派遣されたため、私を含む配属先のスタッフも手探り状態からすべてが始まった。まずは私の目指す活動を伝え、配属先の希望にも沿えるように調整を行ったところ、「子どもたちの学びの成長や養護施設での生活が充実するような活動を提案し、実行してほしい」と言われ、大変恵まれた環境であった。しかし、同時に「自由」とは、「放任」ということでもあり、自らの「責任」も大きく、「積極性」が大きく問われた2年間でもあった。
 赴任当初、私は施設に隣接されている学校の英語の先生であるカウンターパート(CP)と一緒に授業をすることになった。授業を見ているとCPはベテランで経験があり、クラスをきちんと運営しているように感じたが、私が授業を始めた途端に教室からいなくなってしまう事態がたびたび発生するようになってしまった。ときには、「この日は休みたいから、私の代わりに2日間授業を任せたい」「子どもたちの成績をあなたの思うように適当につけてほしい」など、マンパワーになりかけていた。協力隊の目的は、決して現地の人の仕事を楽にすることではなく、自分自身の技術や強みを生かして、目の前にいるCPの意識や、私であれば、子どもたちの視野、興味を広げていくことではないのかとしばらく悩んだ。その結果、私は、私自身の日本文化・英語・算数などのクラブ活動と、平和学習や異文化理解教育などのセミナーやイベントの開催を主な活動として優先し、ALTとして英語の授業にかかわる時間をかなり減らしてしまった。
 活動も終盤をむかえ、積極的にさまざまなことを発信する私の姿は配属先の同僚たちにも認められ、CPとも信頼関係はできあがっていた。しかしCPに「私は本当にあなたと授業をしたかった。でもあまり授業に来てくれなくなったね。子どもたちもいつでもあなたを待っていたよ」と言われたことが今も胸に残っている。そのときになってやっと「私はなぜ問題発生時にCPと話し合わなかったのか。きちんと向き合っていれば、彼女の授業に対する意識を変えたり、お互いに新しい授業アイデアをシェアしたりすることでより良い授業を子どもたちにも提供できたのかもしれない」と後悔した。

隊員自身の振り返り

問題が発生したときに、CPと話し合うべきだったが、ベテランであるCPのプライドを傷つけたくない一心でNOと言えなかった。しかし、言葉や表情の使い方ひとつで自分の思いはきちんと伝えられたと思う。この経験より、優先順位をしっかり決めて、本気で人と向き合う強さを身につけていきたいと考えるようになった。

他ボランティアの分析

授業をする姿を見てもらう

 私の場合、活動先の学校で体育の先生として迎えられました。最初のうちは、通常通りに授業を行っていましたが、そのうちに学校側が担当の先生を配置してくれたり、授業で行ったストレッチの動きを取り入れてくれたりなどするように。私が授業することによって、周囲の意識が変わっていくこともあるのだと思いました。また、CPの考えを吸い上げるために、直接聞くことが難しければ、同僚に相談してみるのも一案です。「こんなことをやってみたいから協力してほしい」など、もっと発信してみたら、ご自身の活動について、より知ってもらえたのではないかと思います。
文=協力隊経験者
● アジア・青少年活動・2015年度派遣
● 取り組んだ活動
青少年健全育成のため、主に体育の授業や授業サポートを行う。

活動から一歩離れた場所で信頼関係を構築

 私自身、CPの授業に対するモチベーションが下がって悩んだこともありました。そのときは、授業で使えるような新しい折り紙の本や動画を一緒に見てつくったり、お茶をして(私の派遣国ではお茶を飲む文化がある)全然違う話をし、気分転換をしたりするなど信頼関係の構築を何よりも優先させました。ボランティアに来たからには活動を成功させたいと誰もが思うことですが、一見活動には関係なさそうなこと、CPとお茶を飲むことや一緒に楽しい時間を過ごすことが、結果的にはCPとよい関係が築け、よい活動につながると思います。
文=協力隊経験者
● アジア・青少年活動・2014年度派遣
● 取り組んだ活動
派遣国の公立保育園でCPと共に3~6歳の子どもに美術(折り紙、お絵かき、粘土など)を教えた。

片山さん基礎情報

【PROFILE】
1987年生まれ、広島県出身。2010年、広島修道大学法学部国際政治学科を卒業後、株式会社鷗州コーポレーションにて塾講師として子どもたちの学習・進路指導に携わり、退職後、ワーキングホリデー制度を利用し、カナダへ。16年1月、協力隊に参加。18年1月に帰国。

【活動概要】
キルギスの首都ビシュケクにて、養護施設であるオーストリアのNGO 「SOS子どもの村」に配属され、以下の活動を行った。
●施設内に住む約100人の子どもに対し、日本文化、英語、算数のクラブを開講。
●施設に隣接する学校で英語の授業やイベントを開催。

知られざるストーリー