希少職種図鑑 [デザイン]

派遣中:7人
累計:97人
分類:人的分野
活動例:販売促進ツールの提案や、職業訓練校でのデザイン指導など
類似職種:コンピュータ技術など
※人数は、青年海外協力隊派遣実績、2018年6月30日現在。

話=伊藤洋美さん(ボツワナ・2014年度1次隊)

Q メインの活動は?

配属先でデザインを教える伊藤さん。要請内容以外にも、他隊員の活動を手伝ったり、文化交流イベントやJICAの現地広報の仕事に携わったりなど、やりたい事があれば自由に挑戦できたのも魅力だったという

 デザインの仕事は、配属先のプロジェクトごとのチーム(考古学・自然史学・民俗学など)から依頼され、実施。しかし、他部署から持ち込まれる仕事の多くが無理なスケジュールで、断らない現地デザイナーにも問題があるのですが、ボツワナ人は同じコミュニティの中でNOと言うことが苦手な傾向があり制作期間が足りず、質が落ちるという悪循環だったため、まず職場のワークフローの改善に着手しました。
 要請内容にあった技術移転は、人材育成に近かったです。道具を使い、何をどうつくるかという考えを引き出す行為が必要で、デザイナー育成は協働する中で教えていく方が良いと思いました。結果的にカウンターパートは私のデータを見て、良いと思ったものをほぼ自動的に拾っていくように。逆に、口頭で「このやり方が私はいいと思う」と教えたことは定着しませんでした。

Q 活動の最大の困難は?

 スケジュールをまったく考えていない「三つ折りパンフレット」の依頼がきたとき。イベントで使う予定のパンフ制作の依頼が、開催日の前日に到着。デザイン・印刷・加工の時間が考慮されておらず、でも依頼者は泣きついてくる。その場では怒ったものの断る訳にもいかないので、結局、残業などで対応せざるを得ませんでした。

Q 試みた解決策は?

 会議でスケジュールの確定をさせる試みをしました。「どういう工程なの?」から始まり、質問のみの形式で進め、「それにどれくらい時間がかかると思う?」を連発。同じことを何度聞かれても絶対に怒らないようにし、気軽にコミュニケーションが取れるように心がけました。活動後半でスケジュール無視の仕事が「最近ない」と感じ、スタッフが仕事のやり方を変えてくれていたことに気がつきました。一番大事なのは根気と我慢かもしれません。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 文化的背景が違う人間にデザインを教える際には、なぜ日本人が「ここにこだわるのか?」を、現地人が納得する説明ができないことが多いことに気がつきます。おそらく、それがデザイナーの自己満足的な観点であり、一方、現地人が納得する説明ができることは一般化できるセオリーなのだと気がつきました。結果的にブラッシュアップしたセオリーの中で仕事をするので、日本でやっていた頃より目的が明確な仕事になったと思っています。もう1点、広告系のグラフィック・デザイナーに特化した話ですが、この業界は転職する人が多く仕事も豊富にある。個人的に帰国後、再就職に大きな壁は感じなかったので、安心して挑戦してください。

伊藤さん基礎情報

【PROFILE】
1981年生まれ、東京都出身。筑波大学芸術専門学群卒業後、広告制作会社2社に合計約8年勤務。2014年に退職後、協力隊に参加。17年3月帰国。同年10月より短期ボランティアとしてパラオ国際サンゴ礁センターに配属され、PR・土産品などのデザインを担当。18年11月よりパラオの同センターで現地雇用契約。08年よりカンボジアNGO 「アンコール・クライマーズネット」の広報を担当している。

【活動概要】
ボツワナ国立博物館の展示・PRツール・イベントツールなどのデザイン制作を担当するテクニカル・サポート・サービス(TSS)部署に配属され、以下の活動を行う。
●展示デザイン、PR、イベントなどのデザイン
●現地職員への技術移転

知られざるストーリー