JICA Volunteer’s before ⇒ after

福田順子さん(キルギス・コミュニティ開発・2015年度2次隊)

before:フェアトレードショップ販売員
after:アフリカ専門輸入販売会社社員

 アパレルの販売員、フェアトレードショップの店員を経て、青年海外協力隊に参加した福田順子さん。協力隊への参加により、改めて知った大切な人たちの側にいたいという気持ち。また、海外と雑貨への消えぬ憧れから、福田さんは現在、日本にあるアフリカ雑貨輸入販売会社の社員として働いている。

両親の姿が、自分の基礎に

[before]キルギスで本当の家族のように接してくれたホストマザーと福田さん

 本や映画が好きで夢見がちな子どもだったという福田さんは、米国人映画俳優に憧れ、通訳を目指して英語科のある高校に進学した。しかし、卒業時には自立への思いが強くなり、就職。アパレルの販売員になった。前向きで、人と話すことが好きな福田さんに、接客業は天職で、不足なく、楽しく暮らしていた。この生活でいいと思って過ごす頭の片隅で、このまま人生が終わってしまうとも感じた。
「やりたいことって何かな、と考えて浮かんだのが両親でした。父は獣医師としてJICAのプロジェクトにかかわったことがあり、家族同伴の海外勤務もありました。母は手芸が得意で、私の服は手づくり。海外と手仕事、身近な2つのことが、私のやりたいことの基礎だと思うようになりました」
 辿り着いたのが、フェアトレードという言葉だ。たまたま、家からほど近いフェアトレードショップが店員を募集しており、転職を決めた。接客をしてみると、生産地である開発途上国に行ったことがないため、商品を自分の言葉で紹介できないことに気づく。休暇のたびに生産国を訪れ、また、国際協力NGOのインターンとして海外研修にも参加。知識の増加と比例して現場で活動したい思いが募った。協力隊経験者だった同僚の話も聞き、現地で暮らし、活動できる協力隊への応募を決意。合格し、キルギスへの派遣が決まった。
 一村一品運動を実施する生産団体の組合に所属し、生産団体数の増加を目指した巡回活動や、生産された商品の販売店でマネジメント支援に取り組むこととなった福田さん。派遣前は、収入を得るために懸命に働く現地スタッフを支援するぞ!という気持ちだった。ところが現実は、女性だけでの外出がよしとされない現地の習慣があり、そんななか家を離れることができるこの仕事は、現地の女性にとって息抜きの場となっていたのだ。女性たちがおしゃべりを楽しみながら働き、つくられる商品の背景を愛おしく思った。
「この仕事は、女性たちの幸せにつながっている。活動をとおして大事な友人となったスタッフが幸せであるために、できる限りのことをしたいと思うようになりました」
 取り組んだのは販売店の改善。接客や商品のディスプレイ、収支管理の方法などを現地スタッフに伝え、売り上げを明確にするなど目標を持って働けるようノウハウを伝えた。福田さんの思いは伝わり、スタッフは知識を吸収していき、スタッフにとっても福田さんは大切な友人になっていった。
 キルギスの友人を大切に思うほど、日本の家族や友人を思い出した。できればみんなの幸せを願い、側にいて支え合えればいいけれど、自分の抱えられる量は限られている。日本を遠く離れたことで、大切な人の側にいることが、自身の幸せだと思うようになった。

小さな幸せを日常に見つける

[after]現地の生産者に会う福田さん

「仕事はタイミングと縁」と福田さんはいう。派遣中、同時期に2人の知人から「あなたにぴったりの仕事」と、有限会社アフリカンスクエアーの仕事を紹介された。同社は、アフリカの雑貨や食品などを輸入販売しており、本社は福田さんの地元・埼玉県。海外と雑貨にかかわり、家族の側にいられる仕事だった。帰国後、面接を経て入社。現在は、仕入れ・バイヤーチームに所属し、ケニアを担当している。日本では商品の受注と現地への発注、ケニアでは発注品の進捗管理、買い付け、営業などを行う。発注の際、寸法が違えば品質に影響が出る。念押しを重ねながら業務を進める方法は、協力隊時代と変わらない。
「協力隊の経験で、言葉が通じづらいことに慣れていることに加え、日本人の仕事の感覚と海外の仕事の感覚が違うことを実感しました。それを前提に仕事に取り組むので、相手に合わせながら仕事を進められます」
 同社では年に一度、商品展示会を開催している。そんなとき、自らの言葉で商品を語ることのできる自分に出会う。
「どんな商品にも必ず魅力があり、それを見つけるのも私の仕事。現地で商品の背景を知り、日本で伝える機会を仕事で与えてもらえたのは幸運でした。学ぶことも多く、人としても成長につながっていると感じています」
 何より商品をとおしてお客様と話が広がる、そんなやりとりに幸せを感じるという福田さん。家に帰れば大切な人と食卓を共にできる。小さな幸せを積み重ねていくこの生活を、かけがえのないものだと感じている。






福田さんのプロフィール

[1982年]
埼玉県出身。
[2001年]
浦和実業高校卒業後、アパレル販売員に。
[2006年]
フェアトレードショップ「アース・ジュース」の販売員に
選択の理由:父親が、TV番組の「アニマルプラネット」をよく見ていたことや、好きな映画俳優が環境保護活動に熱心だったことも、フェアトレードに興味を持った理由のひとつ。
[2013年]
(特活)シャプラニール=市民による海外協力の会のインターンとなり、外務省主催の「NGOインターン・プログラム」を利用し、ネパールで10カ月研修を受ける。
[2015年]
10月、青年海外協力隊に参加。キルギスのイシククリ州にある一村一品組合に所属し、生産者増加を目的とした生産者団体の巡回と、一村一品ショップでのショップマネジメント指導に取り組む。
[2017年]
10月、帰国
[2018年]
1月、有限会社アフリカンスクエアーに入社。現在は仕入れ・バイヤーチームに所属し、ケニアを担当している。
選択の理由:キルギスで、大好きな日本茶を淹れて飲んだときにおいしく感じられず、日本の物は日本でこそ1番良い状態でいられるのではないかと思うようになった。人間もそうではないかと感じ、日本で暮らせる仕事を選ぶ。

[有限会社アフリカンスクエアー]
設立:1992年5月(開設は1990年)
本社所在地:埼玉県川越市増形3-2
事業内容:アフリカ産品専門の輸入販売など
従業員数:32人(2018年2月現在)

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