希少職種図鑑 [料理]

派遣中:9人
累計:115人
分類:人的資源
活動例:職業訓練校での料理指導、日本料理の紹介など
類似職種:家政・生活改善、栄養士など
※人数は、青年海外協力隊派遣実績、2018年9月30日現在。

話=露口聖代さん(モロッコ・2015年度2次隊)

Q メインの活動は?

職業訓練校で調理実習を行う露口さん(右端の手前)。露口さんは現在、隊員時代にお世話になった日本食レストランに就職し、海外での日本食提供について勉強している

 職業訓練校に通う生徒の実習先を開拓するため、町中の飲食店に訪問していました。オーナーや料理人と知り合う中で、日本食のニーズを感じる機会が多く、それが生徒の就職につながるのではと思うようになりましたが、当初は資金不足のために学校で日本食の授業は断念していました。
 活動中盤、よく訪問していたスーパーマーケットで、お寿司のデモンストレーションの依頼を受け、イベントを行いました。そこからつながりができ、調理実習の食材を支援してくれることになり、日本食の授業を実施することができました。料理手順を写真に納め、アラビア語とフランス語のレシピを作成しました。

Q 活動の最大の困難は?

 一番頭を悩ませたのは、カウンターパート(以下、CP)とのかかわりでした。初代ということもあり、配属先も隊員への対応に慣れていなかったと思います。CPと毎日顔を合わせ、一緒に居る時間が長くなるほど、仕事への意識が噛み合わなくなりました。活動中盤からは少し距離を置き、個人で協力者を集める方向にシフトチェンジすることにしました。幸いにも、配属先のディレクターはいつも協力してくれたのでとても心強かったです。

Q 試みた解決策は?

 とにかく日本人であり隊員である自分にしかできないことは何かを考えました。その中で一番力を入れたのは、CPが実施していなかった生徒たちの実習のフォローアップです。各実習先を定期的に巡回し、生徒と一緒に厨房に入って問題点があるかどうか調査しました。そして、オーナーに直談判して実習環境の改善や、新たな実習口を増やすことなどを行いました。靴の底が取れるまで町中を歩き回った成果が、実習先や就職口の開拓につながったのだと思います。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 実は、私も配属先の学校の生徒たちのように、10代でドロップアウトした経験があります。当時の私からすれば、モロッコで同じような境遇の人のために、青年海外協力隊員として活動しているとは夢にも思わないでしょう!! どんな経験も、無駄にはならないと思います。
 それに加え、みんなで食事をすることを大切にしているモロッコの人たちの温かさに触れられたのは、とても貴重な経験でした。技術や知識を伝えることも大切ですが、まずは現地の人と一緒にテーブルを囲み、食事を楽しんでほしいと思います。

露口さん基礎情報




【PROFILE】
1990年生まれ、三重県出身。2012年、奈良佐保短期大学生活未来科食物栄養コースを卒業後、宝山寺福祉事業団あすかの保育園に栄養士として入社。3年間、給食調理や献立作成、食育活動などに従事した。退社後、15年9月、協力隊に参加。17年9月に帰国し、現在はカサブランカにある日本食レストランILOLIに就職。

【活動概要】
モロッコのテトゥアンにある職業訓練校にて、15〜30歳の学業を中退し、経済的に生活が困難な青年を対象に、下記の活動を行う。
●料理・製菓の技術を指導
●レストラン、パティスリー、ホテルなどに出向き、実習先や就職口の開拓
●身近な食材で再現できる日本食レシピの作成など

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