希少職種図鑑 [レスリング]

職種概要

派遣中:3人
累計:20人
分類:人的資源
活動例:競技の実践指導、競技の普及、指導者の育成など

※人数は、青年海外協力隊派遣実績、2018年12月31日現在。

話=魚住彰吾さん(セネガル・2016年度3次隊)

Q メインの活動は?

魚住さんが計画・開催した「レスリング公式大会」の参加者たち。魚住さんは計画を実現させるために、「諦めずに続けること、違った価値観、考え方を受け入れること、次の世代に受け継がれる仕組みをつくること、周りの環境や人を味方につけること」を重点的に考えた

 セネガルでは、「セネガル相撲」というレスリングに似た競技が広く普及しているものの、レスリングの競技者は、成人100人程度で、少年少女は、ほぼ皆無。そこで、若年層への普及活動をメインとして地域の少年少女向けのレスリング教室の実施や、その参加者を対象にした、「レスリング公式大会」を開催しました。
 公式大会は、派遣8カ月後に計画し、開催までさらに9カ月かかりました。開催効果を拡大するため、異なるスポーツ行政機関に協力を依頼。開催後は、各機関の間に協力体制ができ、今後、セネガル主導での大会運営・進行の体制が可能になりました。また、セネガル相撲協会関係者が、少年少女の選手に対し、国際大会出場に必須のライセンス取得への協力を表明してくれました。

Q 活動の最大の困難は?

 公式大会の開催です。配属先以外の地域のスポーツ行政機関やセネガル相撲協会と協力体制を構築し、開催しようと試みました。しかし、国・州・県の異なる行政機関内での立場上のトラブル(主導権、運営方法・体制に対する考え方の違い)により開催が困難となり、大会開催が2度破棄されました。その後、3つの行政機関の関係が悪化し、任期内での大会実施が難しくなったことがありました。

Q 試みた解決策は?

 私自身が各行政機関の仲介役となり、関係の修復を図りました。具体的には、各行政機関の長と直接話し合う機会を20回程つくり、レスリング普及の意義や可能性、普及に取り組む上での大会開催の重要性について議論しました。また、各行政機関の長が、公式な会議で議論し合う場を設け、彼らと解決策について話し合いました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 2年という期間は長いようで短いです。こう感じていた私は四六時中、活動のことを考え、行動に移しました。その中で失敗や挫折は何度も経験しましたが、そのたびに問題点を見つけ、解決策を考え、突破口を見つけました。この原動力となったのはレスリング関係者の存在です。彼らのためにレスリングを通じて可能性を広げたいということが、私に強い意志や力をくれました。
 現在活動されている方も誰かひとりでも考えを共有できる仲間がいれば、「その人のために」という考え方で突き進むことで、強い意志や力を得られると思います。それが、自分ひとりでは見出せなかった道につながると思います。
 皆さんも、全力でぶつかり、悩んで、考えて、楽しんでください。皆さんの活動がひとりでも多くの人の心を動かす力になることを祈っています。

魚住さん基礎情報





【PROFILE】
1993年生まれ、兵庫県出身。小学5年生からレスリングを始め、大学4年生までの12年間競技を続けた。主な実績としては日本選手権5位、大学選手権準優勝など。国外大会での入賞実績もあり。2016年3月、専修大学経済学部経済学科を卒業。大学のレスリング部監督の薦めで、17年1月、協力隊に参加。19年1月に帰国。

【活動概要】
国立国民スポーツ教育大学に配属され、レスリング競技において高い競技レベルの選手を輩出することを目的に、以下の活動を行う。
●配属先でレスリング授業の実施計画策定及び授業の実践技術指導のサポート
●地域の少年少女レスリング教室の活動にかかる計画の策定から実施までのサポート など

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