“失敗”から学ぶ

用具不足を解消する活動を開始したが、現地の人に引き継げなかった

文=青木 泉さん(モザンビーク・青少年活動・2016年度2次隊)

手芸クラブの児童たちに巾着のつくり方を教える青木さん

 配属先の学校は、私の赴任前から体育用具の不足に悩まされていた。歴代の隊員が用具を多々寄付したこともあり、私も赴任直後に配属先からJICAの現地業務費での用具購入を執拗に求められていた。配属先も努力するとの条件をつけ、任期1年目に現地業務費でボールなどの購入に至ったが、配属先の姿勢が変わることはなかった。用具不足の問題を自分たちで対応する考えを持ってほしかったため、赴任1年後、私は手芸クラブを発足。児童に裁縫などを教えてポーチや巾着をつくり、それらを売って得た収益で授業用具を購入する活動を開始した。
 最終的には現地の人が手芸クラブを運営できるように、活動開始前に同僚たちに相談し、2、3人から一緒にクラブ運営をする約束を取り付けることができた。しかし、約束した同僚たちはなかなかクラブの活動日に現れず、私ひとりで児童たちと活動する日々が続いた。同僚に来てほしいとお願いし、約束してくれるものの、ドタキャンなどが繰り返された。そのうち私は同僚に期待しなくなり、来るのか不明な彼らをあてにするより自分ひとりでクラブを運営する方が楽だと感じて、巻き込むことを諦めてしまった。
 任期が残り5カ月を切った頃から、クラブでつくった作品が売れ始め、収益で授業用具を購入できるようになっていった。参加児童は毎週作品をつくることを楽しんでいて、私の離任後も引き続きクラブ活動をしたいと言ってくるようになっていた。やはり引き継ぐ人を再度探そうとカウンターパートに相談したのだが、「給与が発生しない活動には自分も含め、同僚は皆、消極的である」と聞かされた。そこで、手芸クラブの顧問を務める人にも手当をつけてもらえるよう、企画調査員(ボランティア事業)経由で配属先長に提案。しかし、「クラブ顧問の手当を支給するのは教育省で、学校からは何もできない」という回答だった。結局、手当は断念し、クラブを引き継ぐ人も見つけられず、任期終了を迎えてしまった。
 クラブを存続させられず子どもたちを失望させてしまったし、手芸クラブの活動が用具不足の解消につながっていたのに廃部になってしまった。早くからクラブの引き継ぎを計画して、同僚や配属先をもっと巻き込んで活動を進めるべきだったと、反省が残った。

隊員自身の振り返り

開始時点で、顧問がつくように配属先ともっと話し合うべきだった。クラブ活動が「誰のため」「何の目的」であるかを同僚に理解してもらうこと、手伝うと言ってくれていた同僚がなぜクラブ活動に介入してこないかを詳しく聞くことを、もっとするべきだった。ひとりのほうがクラブ運営は楽だと早々に引き継ぎを諦めてしまったが、本当は同僚とより一層コミュニケーションをとって食らいついていけばよかったと感じている。ほかにも、顧問への手当が問題とされたときに、手芸部の作品を売って得た収益から捻出するなど工夫できることがあったのではないかと思う。

他隊員の分析

達成感を味わえる環境をつくる

 虚無感や諦めは、本気で活動に向き合った方のみが得られる感覚だと思います。私も隊員時代に用具不足という壁にぶつかりました。そこで、タームに一度同僚から寄付を集め、校長からも情操教育用の予算をもらうことにしました。ここで私が使った手法は、私も寄付したことは伏せ、同僚の寄付と予算だけで用具を買ったと伝えることです。これが彼らのモチベーションにつながり、最初は1人10円だった同僚の寄付が、100円相当へと上がっていきました。また、同僚には常に感謝を示すよう努めたことで、活動を同僚に引き継ぐことができました。
文=協力隊経験者
● アフリカ・小学校教育・2015年度派遣
● 取り組んだ活動
体育、図工、音楽の促進を小学校で行う。赴任当初時間割に全くなかったこの科目を、同僚の助けもあり、各クラスに週2回ずつ発足させ、すべての授業を同僚に引き継いだ。また運動会などのイベントも実施した。

現場の声に解決の糸口がある

 私は、現地の人が実際に何に困っているのか、どこに必要性や困難を感じているのか、現場の生の声から情報収集をすることを心掛けていました。本音が聞ける信頼関係を築きたかったので、活動後におしゃべりしたり、お茶をしたりして、どんどん輪の中に入っていきました。そこで先生方は児童の学習態度について困っていることを知り、現状を聞いて改善策を提案、問題の解決につながりました。自分がやる方が早いこともあるかもしれませんが、自分が思った解決策よりも、現地の人の言葉の中に解決の糸口があるのかもしれません。
文=協力隊経験者
● 中南米・小学校教育・2015年度派遣
● 取り組んだ活動
小学校2校にて活動し、算数における児童の学力向上と教師の授業力向上を目指し、主に授業観察後の指導や校内外での研修会の定期実施、研修グループの立ち上げなどを行う。

青木さん基礎情報





【PROFILE】
1990年生まれ、東京都出身。2013年3月成蹊大学文学部現代社会学科を卒業後、中小企業の商社に営業事務として入社。16年9月、協力隊に参加 (現職参加)。18年9月、帰国。18年11月より休職していた会社へ復職。

【活動概要】
モザンビークの小学校にて情操教育支援として主に以下の活動を行う。
●現地教員とともに体育と音楽の授業運営
●バレーボール部や手芸クラブの活動の運営と支援
●学校にて事務作業の支援

知られざるストーリー