希少職種図鑑 [きのこ栽培]

職種概要

派遣中:1人
累計:46人
分類:農林水産
活動例:栽培技術の移転、栽培環境の改善、栽培試験や研究など
類似職種:林業・森林保全

※人数は、青年海外協力隊派遣実績、2019年2月28日現在。

話=三田 岳さん(マレーシア・2015年度3次隊)

Q メインの活動は?

菌床工場で活動する三田さん。奥に写っているのが、菌床の原料となるおが粉。この菌床を使用し、任地で栽培した、もしくは栽培を試みたキノコは、日本のスーパーでもよく見られるシイタケ、エリンギ、エノキタケ、ナメコ、ブナシメジのほか、クロアワビタケ、ヒジリタケ、ネッタイカワキタケ、レイシなど約20種に及ぶ

 農家の収入向上を目的とする地域開発公社ボルネオマッシュルームに派遣され、菌床工場の改善や、キノコ栽培の普及活動などに取り組みました。
 現地には、菌床工場の雑菌汚染率が非常に高いという問題点がありました。赴任当初は3割を超える菌床を廃棄しており、これが配属先の財政を圧迫。このままでは農家に販売する菌床の値段も上げざるをえず、農家の栽培意欲を削いでしまう……そこで、この問題に配属先職員とともに取り組み、さまざまな対策を行いました。
 まず原因を調べ、主にアカパンカビによる汚染であることを確認。そこで、手洗いやアルコールによる衛生指導、接種法の改善、接種室の破損やUVランプの修繕、換気扇フィルターの設置、培養室のネズミ駆除(ネズミが菌床に穴をあけ汚染を拡大させるため)、培地含水率や殺菌釜内温度の計測・改善を行い、最終的に雑菌汚染率を1割以下まで下げることができました。

Q 活動の最大の困難は?

 私は収量の上がる日本式の栽培法を普及させたくて、配属先の職員に教えたり、農家に対して講習会を開いたりしました。実際現地で試験栽培を行うと、マレーシア式の栽培法と比較して1.5倍以上の収量があったため、私は必ず普及できると考えていました。しかし、多くの農家が興味を持ってくれたにもかかわらず、普及はほとんど進まず、実質失敗してしまいました。

Q その失敗を活動にどう生かしましたか。

 私はなぜうまくいかなかったのか、日本式の栽培に取り組んでくれないのか理由を聞いて回りました。すると、いくつかの地域では頻繁に断水が起こるため、水を大量に使う日本式の栽培法は合わないことが判明。また別の地域では、兼業農家のため手間のかかる日本式の栽培は難しい、という意見もありました。以降、私は日本式の栽培を農家に推奨するのではなく、農家から声の上がった問題点の解決を中心に活動を行うようになりました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 キノコ栽培は、結果が出るまで時間を要すものが多く、日本とは違った環境・設備で栽培を行うため、思ったような結果が得られないことがあります。しかし、焦らず粘り強く活動していきましょう。そして注意深く状況を観察し、任地に最も合った方法を考えることが大事だと思います。道具や試薬、機械などが不足しがちな開発途上国ですが、気候や価格では日本より有利な場合もあります。創造力をフル活用して、アイデアをひねり出しましょう。

三田さん基礎情報





【PROFILE】
1986年生まれ、埼玉県出身。大学では森林科学を専攻、卒業後は一般企業でキノコの品種改良・栽培に関する業務に従事、4年半勤務。2016年1月、協力隊に参加し、マレーシアに派遣される。19年1月帰国。同年3月、元配属先の公社に就職。

【活動概要】
ボルネオ島サバ州、地域開発公社ボルネオマッシュルームにて、農家支援のため、以下の活動を行う。
●現地公社の菌床工場を改善
●キノコ栽培農家の巡回、講習会の実施
●各種キノコの栽培試験
●菌床の新規原料に関する研究 など

知られざるストーリー