希少職種図鑑 [文化財保護]

職種概要

派遣中:3人
累計:39人
分類:人的資源
活動例:文化遺産などを持つ博物館の展示改善や広報活動など
類似職種:学芸員など

※人数は、青年海外協力隊派遣実績、2019年2月28日現在。

話=主税和賀子さん(ベトナム・2015年度1次隊)

Q メインの活動は?

展示改善のためにチームを組んだ2人の同僚と主税さん(中央)。配属先で展示改善の提案をしてから1年の間、幾度となく同僚と展示改善のための会議を開いた

 ベトナムの世界遺産のひとつであるホイアン市の文化遺産保存管理センターで活動しました。主な活動は展示内容の改善。現地で1年間、同僚たちの展示業務をサポートして気づいたのは、展示のコンセプトを十分に検討することなくデザイン専門の方に展示設計を依頼し、展示業務を行う、というやり方をとっているということ。これによって観光客に内容がわかりづらいばかりか、あとからの展示修正が多く、時間もお金も余計にかかっていました。
 この問題点の解決のため、まず配属先で、展示の現状とコンセプトづくりの重要性をプレゼン。その結果、配属先長から、コンセプトを吟味した方法で展示改善をするようにと指示がおりました。同僚2人と自分でチームを組み、ひとつの展示室を対象に、展示改善を開始。何度も会議を開き、コンセプトと展示設計を吟味し、その結果を同僚に発表してもらい、上司からの許可を得て実際の改善作業を行いました。費用のかからない改善と費用のかかる改善の2段階計画で進めましたが、結論として2段階の途中で任期満了となり、残りは同僚たちに託しました。

Q 活動の最大の困難は?

 会議を開く約束をしても、急な別の業務でキャンセルされるなど、予定通り進むことがほぼないということです。そのため、予定していた期間よりも非常に長い時間を要しました。また、情報共有が少ないので、同僚たちが今何をしているのか、何の業務が入って忙しいのかなどがわからず、予定が立てづらかったというのもあります。

Q 試みた解決策は?

 改善業務に関する会議や改善作業を行う日程について、事前に何度も何度も同僚たちに念を押して口頭とメールでリマインドしました。さらに予定が急に変更になった際には、必ず代わりの日程を決めました。同僚たちの業務や配属先の日程に関する情報は、配属先の同僚や上司、清掃業務の方などいろいろな方と常に話をすることで収集しました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 私は博物館業務でしたが、ひと口に文化財保護といっても、多様な種類の業務があります。文化財は現地の人が自らの国や文化に誇りをもつうえで、非常に重要なものです。それらの保護や活用に関する業務に現地の人と一緒に携わることができるこの職種は、自分にとっても非常に意義あるものでした。やったことがすぐ目の前で効果として表れにくい活動ですが、現地の人と関係性をつくって、仲間になって、一緒に活動していただけたらと思います。

主税さん基礎情報





【PROFILE】
1985年生まれ、鹿児島県出身。2009年、九州大学文学部考古学研究室卒業後、九州大学大学院比較社会文化学府修士課程と博士課程に進学。博士課程在学中の15年7月、協力隊に参加。17年7月、帰国。その後、九州大学総合研究博物館の専門研究員として考古学の研究を続けつつ、18年10月より、福岡県大野城市にある市民ミュージアム 「心のふるさと館」で学芸員として勤務中。

【活動概要】
ホイアン市の博物館にて博物館業務サポートならびに展示内容の充実を目指し、以下の活動を行う。
●展示内容の現状調査と、それをもとにした改善業務
●展示パネルや音声ガイドにおける日本語訳の支援
●パンフレットやウェブサイト作成による広報活動
●教育普及業務の支援 など

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