希少職種図鑑 [言語聴覚士]

職種概要

派遣中:2人
累計:44人
分類:保健・医療
活動例:病院や学校における言語聴覚療法の技術移転など
類似職種:理学療法士など

※人数は、青年海外協力隊派遣実績、2019年3月31日現在。

話=田實奈央さん(コスタリカ・2016年度2次隊)

Q メインの活動は?

配属先の地方病院のスタッフと田實さん(中央)。残念ながら活動期間内に全看護師が嚥下障害に関する講習会を受講することは叶わなかったが、協力者の看護師が講習会を引き継いでくれた。「職種や部門、企画ごとに協力者を得たことで自身の活動の幅も広がった」と田實さんは振り返る

 医療技術の進歩や高齢化などにより、近年コスタリカでも嚥下障害を発症する患者が増えています。日本の病院であれば言語聴覚士が中心になって評価やリハビリを行いますが、コスタリカでは、多くの病院に言語聴覚士が配置されておらず、医療従事者の嚥下障害への理解も浅い状態です。そこで、医師や看護師、栄養士、理学療法士による嚥下障害の適切な評価の実施を目指し、約300人を対象に、講習会や実施練習を行いました。

Q 活動の最大の困難は?

 講習会の定期的な開催に至るまでが苦労しました。配属先に同職種がおらず、嚥下障害の基本的な知識が不足した状況だったため、まずは言語聴覚士の専門性や講習会の必要性を各職種に理解してもらう必要がありました。対象者が多かったため、個別ではなく全体に向けた説明会を実施したいと考え提案をしましたが、カウンターパート(以下、CP)である医師が多忙であることやコスタリカ人特有ののんびりした時間感覚から、なかなか実施に至らず、気持ちがもやもやした時期でした。

Q どう解決しましたか?

 各職種の代表が出席する活動計画会議で、活動内容を説明する機会を得られたことがひとつの契機になりました。これまでは主にCPを通して他職種とのやりとりを行っていましたが、会議により各職種とつながりができ、職種ごとの協力者を得られました。コスタリカ人は、表向きは友好的ですが深くかかわってみると身内意識が強い面がありました。外国人である私の依頼よりも、同僚からの依頼の方が円滑に物事が進むため、各職種に協力者がいたことで定期的な講習会が開催できただけでなく、より多くの受講者確保にもつながったのではないかと思います。ただ、時間感覚は国民性なので、私が慣れることで解決しました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 言語を専門とする職種なので、外国語での活動を不安に感じるかもしれません。確かに苦労はありますが、言語聴覚士として日本で学んだ知識や技術、経験を、言葉に限らずさまざまな方法で伝えることで活動を進めていけます。私の場合は患者ではなく医療者側が対象の活動でしたので、事前に用意した文章やイラスト、動画などを使って、その時点の語学力で説明しきれない内容を補うようにしていました。こうした準備も含めた活動の中で語学も上達し、後半は患者の評価やリハビリも比較的スムーズに行えるようになりました。日本での言語聴覚士としての仕事とはまた違った経験ができると思います。

田實さん基礎情報





【PROFILE】
1989年生まれ、神奈川県出身。2012年北里大学を卒業とともに言語聴覚士国家試験に合格。東京都町田市にある多摩丘陵病院リハビリテーション部へ言語聴覚士として入職。主に成人分野での経験を積み、16年に退職し、協力隊に参加。18年10月、帰国。その後、世田谷区内の訪問看護ステーションに就職し、地域での在宅リハビリテーションに従事。

【活動概要】
コスタリカの国立地方病院にて、以下の活動を行う。
●医師、看護師、栄養士、理学療法士を対象に嚥下障害に関する講習会実施
●主に看護師を対象に嚥下評価の実施練習
●栄養士とともに嚥下障害対応食の作成
●患者やその家族、介助者向け勉強会の実施
●嚥下障害についてのパンフレットの作成 など

知られざるストーリー