希少職種図鑑 [電子工学]

職種概要

派遣中:0人(SVで1人派遣中)
累計:49人
分類:人的資源
活動例:工学系の学校での授業補助や、同僚への技術移転など
類似職種:電気・電子機器

※人数は、青年海外協力隊派遣実績、2019年4月30日現在。

話=宮﨑貴芳さん(ガーナ・2014年度2次隊)

Q メインの活動は?

「ソーラークラブ」を共に立ち上げた教員(後列右と前列左)、新人の教員(後列左)と宮﨑さん(前列右)。写真のソーラーパネルを使用して、太陽光発電システム構築を行った

 工業高校の電気科の教員が生徒に太陽光発電技術を教えるための環境構築でした。赴任当時、教員たちは太陽光発電に興味があるものの、どのようなものか何も知らない状態でした。まず校長に実験の重要性を理解してもらい、倉庫にあった古いソーラーパネルと自動車科の廃バッテリー、現地の部品で自作したバッテリー充電器を使い、放課後に教員たちに太陽光発電技術を教えることから始めました。3カ月後、教員たちと「ソーラークラブ」を立ち上げ、私の教えた内容を取り込んで生徒に授業を実施。私も都度フィードバックや生徒からの質問に答えるなどのフォローを行い、教員たちに太陽光発電授業の経験を積ませることで、授業の質を徐々に上げていきました。

Q 活動の最大の困難は?

 教員たちに教える際、最後に理解度テストを毎回課していたのですが、電力の基礎(オームの法則)の理解度が低いことから、彼らの実力を測るため、抜き打ちテストを実施。すると「太陽電池のことを聞きに来たのになぜこんな試験を受けないといけないんだ。しかも授業後で疲れているのに!」と所属長や一部の教員が怒り、帰ってしまいました。特に所属長が怒ったため、教員たちとの信頼関係が崩れ、今後もう教員たちは授業に来ないのではないかと、その日は酷く苦しみました。

Q どう乗り越えましたか?

 若手教員に「抜き打ちのやり方は間違っていない」と慰められたこと、また怒った教員たちは試験の結果が特に悪く、これを校長に相談したところ、「やる気のない先生には教える必要はない」との話で、だいぶ気が楽になりました。最終的に私の授業に残った教員は8人中2人だけでしたが、非常にやる気があり、「まだ完全な理解ではないと思うけど、とにかくクラブをやってみよう」という私の無理な提案(クラブの時間は無給)にも応えてくれ、生徒への太陽光発電教育の基盤を一緒につくれたのではないかと思います。

Q 派遣予定の同職種の隊員にメッセージをお願いします。

 電気系職種では、まず簡単な部品で一緒に実験することが大事かと思います。私の赴任校は、大学入学のための詰め込み教育で実験もできない状況でした。しかし、カリキュラムの多さと限られた授業時間では仕方のないことでした。そんななかで教員や生徒たちとソーラークラブで簡単な電気の実験(例えば電池と抵抗をつないだ際の電圧、電流の計算をし、実際に組み立ててテスタで測定)でも、生徒たちは日が暮れるまで楽しんで実験をしていました。「楽しい」は人を巻き込めます。

宮﨑さん基礎情報





【PROFILE】
1981年生まれ、愛知県出身。2005年に名古屋大学大学院工学研究科を卒業し、07年より株式会社カネカに入社。主に太陽電池の出力向上のための技術開発に従事。退職し、14年9月に協力隊に参加。17年3月に帰国後、JICA本部に特別嘱託員として技術協力事業の管理を担当。19年5月よりJICA関西センターに専門嘱託員として民間連携事業を担当。

【活動概要】
ガーナの工業高校にて、現地の生徒に太陽光発電技術を教える基盤をつくることを目的に、現地教員に太陽光発電の技術指導を行う。主な活動は以下のとおり。
●放課後に教員への太陽電池技術の授業の実施
●教員と共にソーラークラブの立ち上げ
●太陽光発電システム構築のための業務管理(見積り、発注、組み立て) など

知られざるストーリー