希少職種図鑑 [病虫害対策]

職種概要

派遣中:2人
累計:117人
分類:農林水産
活動例:農作物や人間に害を与える病虫害への対策 など
類似職種:野菜栽培、食用作物・稲作栽培

※人数は、2019年5月31日現在。

話=山川 玲さん(ベトナム・2015年度1次隊)

Q メインの活動は?

畑の脇で路上販売されている、山川さんが病虫害対策を行ったサツマイモ(上の2段)。虫害対策の計画を作成する際は、「失敗できないプレッシャーがかかっていたことに加え、考慮すべき要素が多すぎて気疲れしました」と山川さん

 サツマイモ(甘藷)の虫害対策に特に力を入れました。配属先であるタイバック大学の付近にある農家では、甘藷は長期間貯蔵が可能で、加工性にも優れることから、地域の特産物になりうると期待されていました。しかし、栽培技術も病虫害に対する知識・経験も浅く、収穫量が少ないことが問題でした。そこで、大学の教員とともに病虫害対策を実施。私の赴任時は、病虫害対策が全くなされていない状態だったので、被害の調査から始めました。調査の結果、約半数のイモがアリモドキゾウムシに食害され、売り物にならない状態であると確認されました。そこで、地域で調達できるもの、簡便性などを考慮に入れ、虫害対策を練りました。結果として、ゾウムシによる被害を15パーセントにまで減少させることができました。

Q 活動の最大の困難は?

 主にコーヒーと甘藷の虫害対策を行いましたが、過去に地域で対策したことがなく、全くのゼロからのスタートでした。そのため、ある程度、試行錯誤しながら、地域に合った最適な方法を見つける必要がありました。しかし、対策の実施は、農民の生活がかかっている農地で行ったため、大きな失敗をすることはできない。そのことが、大きなプレッシャーでした。

Q どう乗り越えましたか?

 同僚と相談して、入念な計画を立てました。1番時間を要したのが情報収集です。諸外国におけるコーヒーや甘藷の病虫害対策の実践例をインターネットから入手。分厚いファイル1冊がいっぱいになりました。その上で、コスト性、調達性、簡便性などを考慮に入れ、最適と思われる方法を選定し、虫害対策の計画に組み込みました。計画がうまくいくよう、お寺で願掛けもしました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 私の場合は、害虫防除に関する技術導入に活動の重点を置きましたが、人材育成に重点を置くなどやり方はいろいろあると思います。例えば、開発途上国では化学農薬の不適切使用が問題となっていることから、安心・安全な野菜のニーズが高まっています。それに対する日本での取り組みを紹介することや、農薬の適正使用について農民へ啓発活動を行うなど、座学的な活動を取り入れてもよいかもしれません。また、病虫害対策の実践には、日本だけでなく諸外国の知見も必要ですので、英語の文献が読めるとよいでしょう。2年間で成果を出すのは難しいかと思いますが、次につながるよう(結果がどうであれ)記録を残すことも大切です。頑張ってください。

山川さん基礎情報





【PROFILE】
東京都出身。東京農工大学大学院生物システム応用科学府博士後期課程修了(農学博士)、薬剤師。2015年7月、協力隊に参加。17年6月、帰国。

【活動概要】
ベトナム北西部のソンラ省にて、コーヒーや甘藷の病虫害対策に従事する傍ら、派遣先のタイバック大学の教育研究活動の質向上を支援した。主な活動は以下のとおり。
●カウンターパートである教員と病虫害対策の計画・実施
●農民・学生に対し、農薬の適正使用に関する啓発活動
●高等教育の質向上のため、学内の研究室整備や研究指導 など

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