希少職種図鑑 [医療機器]

職種概要

派遣中:4人
累計:101人
分類:保健・医療
活動例:技術者の能力向上のための技術移転 など
類似職種:—

※人数は、2019年5月31日現在。

話=小翠香織さん(ブータン・2016年度2次隊)

Q メインの活動は?

配属先の同僚や病院スタッフと、透析の水処理装置のメンテナンスを行う小翠さん

 医療機器の交換部品を保管している倉庫の5S活動が主でした。ブータンでは各病院やクリニックに臨床工学技士がおらず、機器の修理やメンテナンスは配属先の保健省が行っていました。配属当初、故障した機器が放置されていて、チーフから機器の修理指導を依頼されましたが、多くのスタッフは部品とマニュアルがあれば修理できると考えており、「今は部品がないから修理できないだけ。技術指導は必要ない」とのことでした。この問題を解決するためには、修理ができる環境の整備が第一と考え、まず倉庫の全部品を把握し、部品を機器の種類ごとに分類しました。次に現在ブータンにある医療機器台帳を基に部品を選別し、リストを作成して棚卸を実施。ラベルと配置図をつくり、必要時、すぐに部品を探せる倉庫が完成しました。

Q 活動の最大の困難は?

 5Sは地味で細かい作業が多く、結果もすぐに出ないので、スタッフのモチベーションを維持することが難しかったです。配属先は以前に5Sの導入を試みたものの断念したため、できないと考えている人が多く、また人手不足のため通常業務で手一杯。開始当初は、目新しさで多くのスタッフが協力してくれていましたが、3カ月後には、1人で作業することが増えました。

Q どう解決しましたか?

 1つ目は、5Sの効果を実感してもらうこと。使用頻度の高い機器から順に部品を整理したところ、1年後にはスタッフから「すぐに修理できた」「部品発注をすぐに行えた」と言われるようになりました。2つ目は、手伝ってくれる人がいないときでも、実施内容と日程を伝え、ひとりでも進めていいか許可を取っておいたことです。誰でもいつでも一緒に作業できる状況をつくり、手伝ってほしいと伝える一方、無理強いはしないで根気よく待ちました。1年半後には、スタッフの意識が変わり始め、5Sを行うようになりました。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 要請内容と違う活動を求められることや、やりたい活動ができないことも多いと思います。私も病院での作業は少なく、メンテナンスもほとんどできませんでした。しかし、医療機器の使用前後の点検や定期点検の必要性を伝えたり、管理システムをつくったりする作業は日本ではあまりできない経験だと思います。その責任の重さに悩むこともありましたが、配属先の同僚や現地のJICAスタッフ、日本にいる同職種の方の助言や支えがあり、乗り越えられました。ひとりで悩まずに多くの人から助言をもらい、その国に合ったやり方を根気よく探してみてください。

小翠さん基礎情報





【PROFILE】
1979年生まれ、大分県出身。2001年、大分臨床工学技士専門学校臨床工学技士学科を卒業。同年、臨床工学技士免許を取得し、病院やクリニックで計11年ほど勤務。主に透析業務を担当。16年10月、協力隊に参加。18年10月、帰国。

【活動概要】
ブータンの保健省に配属され、医療機器管理の向上を目指し、以下の活動を行う。
●部品管理倉庫と作業場に5Sを導入
●日本の医療機器メーカーとブータンのサプライヤーの明確化
●医療機器分類の導入
●マニュアルの手配 など

知られざるストーリー