希少職種図鑑 [バイオテクノロジー]

職種概要

派遣中:2人
累計:46人
分類:農林水産
活動例:組織培養技術による各種植物の種苗生産技術の向上 など
類似職種:−

※人数は、2019年6月30日現在。

話=西川正雄さん(SV/エクアドル・2015年度1次隊)

Q メインの活動は?

配属先の国立ロハ大学・バイオテクノロジーセンターで、研究テーマについてCPと話し合う西川さん。西川さんは、配属先の研究プロジェクトを研究者と一緒に行う目的で活動に取り組んだが、「研究センターで研究者として生活するためや学生を指導する場合には自分の研究テーマを持っていた方が都合がよい」と感じたという。実際に研究テーマを持つことで、他の研究者と対等の立場で自分の研究も可能になり、学生の指導も無理なく実施できるようになったそうだ

 赴任した国立ロハ大学・バイオテクノロジーセンターは、研究に特化された施設であるため学部学生は在籍しない。その研究体制は概ね以下の様であった。同大学内に公表された研究プロジェクトの中から学生が興味を持ったものを選び、プロジェクトリーダーの下に集まって来る。学生の多くは自然科学的な実験に携わるのは初めてである。プロジェクトのリーダー(隊員のカウンターパート〈以下、CP〉でもある)は、1、2人のテクニシャン(*)と共に集まった学生を指導しつつ彼らの協力を得て自分の研究を遂行する。
 このような中で隊員はCPに対しては研究の円滑な進展のための助言者であり技術的な指導者であると同時に、学生に対しても指導的役割を担う。従って、実際の活動は実験計画・手順の立案、実験の原理・目的・意義を解説するセミナーの開催、模範的な実験の実施、得られた実験結果の収集・整理・論文作成などであった。

Q 活動の最大の困難は?

 研究プロジェクトの研究期間は、2年間のものが多い。現地の申請から隊員派遣まで約1年を要し、隊員は任期前半1年でプロジェクトが終了してしまう。私の場合、赴任時には要請書記載の研究プロジェクトはほぼ終了し、CPも数カ月後に異動することが決定していた。着任後すぐに研究プロジェクトとCPを探す必要があった。

Q どう対応しましたか?

 幸い、同センターは全員で20人程度と組織としては比較的小さく、赴任2カ月で各研究者と自由にコンタクトを取れるようになり、それぞれの専門分野や持っている研究プロジェクトを把握することができた。その際にコンタクトしたプロジェクトリーダーの研究に自然に加わることができた。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 私は指導者的な立場で赴任しましたが、最初は学位を持つ研究者からテクニシャンに至るまで、彼らの信頼を勝ち取ることに努めました。そのためには労力をいとわず、率先して体を動かしました。ある意味体力勝負の一面もありましたが、一度信頼を得られれば、あとは比較的スムースに進み、多少の無理も利くようになりました。
 また、研究分野に限らないと思いますが、「インヘニエロ(技師)」をCPとして活動する場合、彼らのプライドを尊重することが重要です。インヘニエロはその分野の専門家としての地位が世間に認められた人であり、その知識や技術に自信を持っている人たちです。一度行き違いがあると中々元に戻らず、相当の努力を要します。

* テクニシャン…実験の補助をする人。自身で研究テーマなどは持たない。

西川さん基礎情報





【PROFILE】
1948年生まれ、長崎県出身。74年、鹿児島大学大学院農学研究科修了後、製薬メーカー入社。同社研究所に所属し、生化学的研究に従事。91年、関西医科大学微生物学講座入職。ウイルスの分子生物学的研究と実験・実習の指導に携わり、2011年6月定年退職。1996年、博士 (医学)。退職後、SVとしてエクアドルの国立ロハ大学・バイオテクノロジーセンターに赴任(2011年度4次隊、2015年度1次隊)。18年7月帰国。

【活動概要】
国立ロハ大学・バイオテクノロジーセンターにて以下の活動を行う。
●同センターへの実験技術移転と研究者および学生の実験技術向上を目指した技術指導
●研究計画および実験計画の作成と実験結果の整理・解釈および論文執筆の補助
●新規研究プロジェクト獲得のための申請書作成

知られざるストーリー