希少職種図鑑 [福祉用具]

職種概要

派遣中:1人
累計:24人
分類:社会福祉
活動例:福祉用具の製作、技術者への技術指導 など
類似職種:−

※人数は、2019年6月30日現在。

話=宮田祐介さん(東ティモール・2016年度1次隊)

Q メインの活動は?

同僚に義肢装具製作のアドバイスをする宮田さん(中央)。現在、世界には義足や装具を必要としている障害者が年間3500万人おり、義肢装具士が提供できている数は5〜15パーセントほどといわれている(WHO annual reportより)。2050年までには、義肢装具の需要は20億人を超えると推測され、慢性的な義肢装具士や材料不足に対して患者が増え続けているのが義肢装具業界の実態だという

 主な活動は患者さんに義足や装具の提供をすることです。日本とは異なる材料や製作法のため、自分がそれに慣れるよう、最初の1年は患者さんを多く見ることを意識していました。同僚の仕事(型取りから納品)は非常にのんびりしていたので、回転率を倍以上にし、それを習慣化させることを目指しました。私がときに休憩時間を削り、仕事をする姿勢を見せること1年、同僚も少しずつペースを合わせてくれるようになりました。2年目からは、私の責任で見ていた患者さんを少しずつ同僚に担当させ、専門職として患者さんを担当する責任を感じてもらいました。その方が私の帰国後、患者さんに迷惑がかからないと考えたからです。

Q 活動の最大の困難は?

 東ティモールには30以上の言語があり、言葉によるコミュニケーションを取るのが困難な患者さんに会うことがあります。交通事故によって脚を切断した4歳の女の子を担当したとき、痩せていて肉の少ない脚に義足を適合させることは難しいうえ、言葉が通じず、さらに女の子の父親は伝統医療を信じていました。義足の使用により再び歩けるようになること、でも女の子が義足をつけて日常生活を送るには家族のサポートが必要なことなどを伝え、納得してもらうことには苦労しました。

Q どう乗り越えましたか?

 このケースに限らず、物事を考えるときは常に最低5パターン以上のアイデアを持つように心がけています。義足の合わせ方、コミュニケーションの取り方、説明方法、誰に協力を頼むかなど、さまざまなケースを想定しておくことで、解決の可能性をより広げることができると思います。できれば多くの人を巻き込み一枚岩で対応することも大切です。そして、その場の状況を冷静に分析して複数の選択肢から最適だと思う方法を試します。さらに大切なことは、試した結果の良し悪しにかかわらず反省し、次に生かすこと。その積み重ねが何よりも大事だと思います。

Q 同職種の後輩隊員にメッセージをお願いします。

 開発途上国では国際赤十字や現地産、中国製の材料や部品を使用していることが多いです。そのため、どうすれば限られた環境で義肢装具の快適性を向上させることができるのか、より創意工夫が求められます。また、日本のように四季がない国も多いため、その国の気候を考慮して製作する必要もあります。しかし、そういった環境で活動をすることで、さまざまな角度からものごとを考える能力や柔軟な発想は鍛えられると思います。それらの経験は任期を終えてからの今後のキャリアにもきっと役立つと思います。

宮田さん基礎情報





【PROFILE】
1990年生まれ、群馬県出身。2013年3月、新潟医療福祉大学リハビリテーション学部義肢装具自立支援学科を卒業後、義肢装具士として奈良県の奈良義肢株式会社に3年間勤務。16年7月、協力隊に参加。18年7月に帰国。同年8月より、タイのマヒドン大学医学部義肢装具学科修士課程に入学。現在は開発途上国向けにコストを抑え、かつ耐久性もあり、快適に使用できる義足の勉強中。

【活動概要】
国立リハビリテーションセンター義肢装具部門にて義肢装具製作、技術指導を行う。主な活動は以下のとおり。
●患者さんの評価
●義肢装具の採型、製作、適合、調整、修理
●同僚への技術指導、知識共有
●材料やパーツの管理、アドバイス
●地方の障害者の地方巡回 など

知られざるストーリー